同窓会の 成り立ちと今後

文・山根　恒弘 （YAMANE, Tsunehiro） 広島大学同窓会　副会長

　このたびは広大フォーラムに同窓会の広報欄を設けていただき誠にありがとうございます。
　今回は、第一回目の掲載として、私から、同窓会の歴史と今後の思いを述べさせていただきます。
　広島大学は昭和24年に旧制の大学と各種の教育機関十校を母体として、国立の総合大学として設立されました。戦後の教育改革に際しての、いわば外圧により県内の高等教育機関が機械的に統合されたものでありました。それに比してその母体校はそれぞれ内面的必然性を強く持って設立されたものです。
　一方、この新制大学になっても同窓会は一本化されず、母体校の固有の伝統を維持しながら、特色を生かした各々の活動をしてきました。例えば教育学部・文学部・理学部の卒業生は、広島高等師範学校・広島文理科大学の同窓会「尚志会」へ、また工学部の卒業生は広島高等工業学校の同窓会「広島工業会」に入ります。このように、卒業後はそれぞれ違った同窓会へ入会し、またそれぞれの同窓会は違った活動を行ってきました。
　昭和38年、第二代皇至道学長は就任早々、学長が会長の全学体育会設立の決意をされました。この設立は「統一」を目指した政治でした。設立までに8年かかっています。この会は、全学のスポーツの普及を目的に掲げ、フェニックス駅伝・キャンプ村等々、全学の参加を募って各種事業を実施し、大学紛争・大学移転の時代の中でも活動してきました。体育会同窓会は、多くのＯＢが長年にわたり運動部の学生のみならず一般学生の応援、指導もしてきました。課外での学生教育と大学の活性化に多大の貢献をしています。
　平成5年、新制大学卒業生の学長、原田康夫学長が誕生し、20数年費やしていた統合移転を一気に完了へと導き、そして同窓会組織の統合への積極的な動きがはじまりました。さらに、統合移転完了を祝い広島大学を支援する「広島大学同窓会連合大会」が開催され、体育会の学生・ＯＢが協力し千五百名の出席者と一千万円を大学に寄附するなど成功を見ました。
　その成功を実感して、やっと平成7年10月統一した組織「広島大学同窓会連合会」が発足しました。また、それから6年後の平成13年、「連合会」の三文字が取れ「広島大学同窓会」になりました。中身はまだ連合のままですが広島大学歴史上初めてこの名称が使われました。
　大学設立55年、体育会設立40年、多くの方々の力が結集され、ここに「統一」というテーマの一応の完結を見ました。しかしまだ真の一本化した同窓会ではありません。課題は残されたままです。今後の活動で解決しなければなりません。さらにもう十年近くかかるかも知れませんが、大学も同窓会も激動の時代を一歩一歩前進していかなければなりません。
　大学においては、今まさに、国立大学法人化が目の前に迫っております。この動きは、教育・研究面で地域のみならず日本の発展に寄与する自律した国立大学としての自助努力が問われるとともに、大学同窓会の支援のあり方も評価される事となります。大きな環境の変化の中で各大学も同窓会組織強化に努力をしてきています。これは、大学が単なる卒業したという過去の場ではなく、卒業してからも同窓会等を通じて社会と大学との連携による共存が必要な時代であることを意味しています。
　前述のように広島大学同窓会は他大学に先駆けて連合会を結成し、同窓会を一体化する動きを始めましたが、今後は地域の行政・企業、様々な人々のご理解ご協力を得ながらも同窓会と大学とが今まで以上に連携を密にして、同窓生の「愛学心」を育て、13の独立した同窓会を一本化した本当の意味での「広島大学同窓会」を目指していかねばなりません。
　今年の7月には広島大学同窓会関東支部が立ち上がり、広島大学を卒業し、関東で活躍している同窓生が一丸となろうとしています。このように前進しつづける同窓会と大学を結びつける一つとして、大学の広報誌である広大フォーラムの一角に、同窓会の広報欄を設けていただいたことは、同窓会にとっては大きな前進となることと思います。