さらなる

 世界平和を求めて 

文・朴 紅梅

(PIAO, Hongmei)
大学院国際協力研究科
教育文化専攻博士課程前期2年
(中国出身)



世界平和弁論大会にて
 去年の11月17日、広島・ピース・センターの主催で第十三回世界平和弁論大会が広島市で開催され、予選で選ばれたドイツ、ブラジル、オーストラリア等八カ国からの十一人が、国際平和都市―広島で感じたそれぞれの平和への思いを熱く語りました。思いがけず私のスピーチが最優秀賞を受賞しました。私のおばあさんは戦争で家族を失いました。私は幼い時からおばあさんの話を聞きながら育ったので、平和への思いを皆さんによく伝えられたのかも知れません。この機会に広島大学の皆様にも、私の平和への思いを伝えたいと思い私のスピーチを紹介することにしました。

戦争が私の家族にもたらしたもの
 中国から参りました。朴紅梅と申します。皆さんご存知かも知れませんが、私は韓国系の中国人です。おじいさんとおばあさんが、第二次世界大戦中、韓国から中国へ避難して行ったため、私の両親、そして私も中国で生まれました。しかし、おじいさんとおばあさんの家族は戦争中バラバラになって、未だに消息は分かりません。皆さん、私はこんな悲惨なことを私の世代で繰り返したくありません。私にとって、家族は命よりも大切です。お父さん、お母さん、妹の四人家族、そして、この地球という大家族も……。けれども、今人類は自ら核兵器を作り出して、この地球家族の破滅を招こうとしているのではないでしょうか。現在、地球上には人類全てを何度でも殺せるだけのおびただしい量の核がすでに蓄積されています。ヒトラーのような人間が、いつ現われ、何が起きないとも限りません。私は生まれて初めて、戦争が起こるかも知れない、という恐れを感じました。

なぜ戦争が起こるのか
 皆さん、核爆弾なんて、食べることも、着ることもできません。それは多くの罪のない人々を一度に殺してしまいます。誰もが平和を求め、戦争を避けようと願っていますが、国と国を隔てると、なぜこの願いが結び合うことができないでしょうか。地球人の一人として、未来の平和を願う若者として、みなさんとともに、この問題を、考えておきたいです。
 なぜでしょうか。その答えは実は簡単なことです。相手のことが分からないから、相手が信じられない。つまり不信感です。この「不信感」という病原菌が、今増殖の機会を狙っています。
皆さん、私達は地球の家族です。しかし、人類はこの真実を無視してきました。だから、戦争が起こったのです。

平和を守るのは私達の責任
 さて、平和が現実のものとなるには、二つの道があります。一つは、人々が古い考え方と行動様式にこだわり続け、想像を絶する悲惨な戦争を経験した後に、ようやく実現するのか、あるいは今協議によって平穏のうちに実現するのか、の二つです。どちらを選択するかは、私達の責任です。
 次の時代を担う若者達に、私達が何を手渡すか。戦争か?平和か?これが、今私達の重大な問題になっています。
私は平和を手渡します。私達の未来に暗黒の世界を作らないために、広島の惨劇を二度と繰り返さないために、今こそ核問題を英知と勇気を持って克服しましょう。

平和への確信
 戦争と破壊を繰り返した二十世紀でしたが、幸いなことに人類はコンピューターという素晴らしいものを作り出しました。インターネットには国境がありません。世界中のどこにもつながっています。二十一世紀はインターネットの時代です。
 皆さん、世界には話し合いで解決できない問題など、一つもありません。インターネットを使ってコミュニケーションをすれば、私達の強い気持ちが、国境を越えて、個人を変え、社会を変え、さらに世界までも変えていくことを、私は強く確信しています。
 核の時代、人類を破滅から救うか否かは、全人類の友好にかかっています。
中国には、こういう言葉があります。
「徳不孤、必有鄰」(徳は孤ならず、必ず隣あり…孔子)―目標を持って、一生懸命に努力している人は、決して孤独ではない。必ず仲間が集まってくる。皆さん、ここに集まった皆さん、日本人も、中国人も、アメリカ人もアフリカの人々も、皆で手を取り合い、さらなる世界平和を求めて、頑張っていきましょう。
(原文・日本語)


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