食器やタイルなどで知られるセラミックス部品は、高い化学的安定性や耐高温特性を持つことから、さまざまな機械部品への利用が検討されています。例えば、エンジンやタービン中で燃焼ガスがあたる部品にセラミックスが使えたら、それらの性能を向上させることが出来ます。ただし、通常私たちが知っているセラミックスは落とすと割れてしまうような材料ですから、そのままでは機械部品として使えません。
普通のセラミックスが脆弱なのは、一つに、材料中に細かな傷や隙間が含まれているためです。セラミックス部品の製造は、一ミクロン以下の非常に細かい粉末原料を、製品形状に突き固め(成形)、その後焼き上げる(焼結)ことで作られるのですが、とりわけ成形工程で粒子を隙間なく充填することが思ったより難しく、隙間が生じたり、ゴミが混ざったりしてしまうのです。
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遠心成形で作ったアルミナナット
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そこで私たちの研究室では、微細な粒子の成形法として「遠心分離」を利用するアイデアを考えました(特許1)。原料のセラミックス粉末を水と混ぜてゆるい粘土状にした後、これを遠心分離機にかけて粉末粒子を沈降させて固める方法です。この遠心成形法ですと水中で粒子が動きやすくなり、さらに粘土中のゴミや泡が遠心分離されるため、粒子を隙間なく充填することが出来ます。そのため、遠心成形アルミナセラミックスの強さは従来材に比べて二倍近くに上昇します。図はこの方法で作ったアルミナナットの例です。
最近では、この方法を利用してより割れにくいアルミナセラミックスを作る方法(特許2)や、遠心成形法を実生産へ応用する技術(特許3)についても、研究を行っています。