『乳ガン
 どう防ぎ、どう治すか』


広島大学名誉教授
西亀 正之 著
講談社/2003年/1,300円
 二十一世紀には、わが国では乳ガンが女性がかかるガンのうち最も多く、死亡数も多くなると予想されます。このような将来予想をふまえ、筆者は広島大学医学部在籍中の過去二十七年の外科治療の経験を、この度の退官にあたり節目としてまとめ、著書を発刊しました(平成十五年三月三十一日退官)。この内容は乳ガンになりやすい要因から、早期の治る時期に発見する方法である自己検診(自分で見つける)の仕方、さらには手術を含めた治療法について分かり易く解説し、乳ガンの事を知りたい、なおる時期の早期に発見したい方々や、やむなくガンと共存されている方の一助となればと思い記述しました。学内・学外を問わず一読いただければ幸いです。



『義歯の洗浄』

大学院医歯薬学総合研究科
浜田 泰三・二川 浩樹 著
デンタルダイヤモンド社/2002年/5,600円
 本書は約二十年前に刊行した「デンチャープラークコントロール」、十年前の「デンチャープラーク」に続く同系列の単行本です。わが国に限らず世界的にも義歯洗浄剤を一冊の本にまとめた例はみあたりません。義歯洗浄剤は、わが国だけでも年間百億円市場と言われていますが、欧米ではもっと古い歴史があります。現在、イギリスやアメリカなどのスーパーに行くと、かなり広い売り場面積を占めていることに驚かされます。日本では皮肉にもデンチャープラークコントロール研究会が閉会した後、ここ十年くらいで急速に普及し、現在では義歯装着者の過半数が市販の義歯洗浄剤を使用していると思われます。特に近年、不潔な義歯の装着が誤嚥性肺炎やその他様々な全身疾患との関連性があることなどから介護の現場では日々重要性を増しています。本著では、このようなデンチャープラークの病原性や義歯洗浄剤の製品個々についてグラビアなどを使ってわかりやすく説明していますが、「患者の説明用にいい」あるいは「洗浄剤の一つ一つについて、その特徴がすごくよくわかる」などと早くも医療現場の方々や企業の開発部の方々に好評を博しています。



『「親日」と「反日」の
      文化人類学』


総合科学部
崔 吉城 著
明石書店/2002年/3,300円
 一般的に韓国人は日本に対して暴力的な態度をとります。差別用語ともいえる「倭奴ウィノム」ということばを一般用語のように使ったりする場合も少なくありません。学校の教師や学者においても同様であり、このような悪口や暴言は躊躇することなく使用されるのが普通であり、問題になることはまずありません。映画やドラマでも日本人は悪いイメージを極めるようにして登場します。日本に対してはまるで悪口言いたい放題の社会のようです。この日常的な現象は政治的社会的日韓関係が悪化するとそれを増幅させます。私は韓国のこのような現象の深層を探って分析しました。戦前における親日化、植民地と日本のイメージ、農村振興運動、反日の暴力化―朝鮮総督府庁舎の破壊、宗教とナショナリズム、巫俗と民族主義、日帝植民地時代と朝鮮民俗学などの内容になっています。



『X線吸収分光法
 ―XAFSとその応用―』


太田 俊明 著
アイピーシー出版/2002年/5,000円
 我が国の放射光科学にはほぼ二十年の歴史があり、現在の第三世代放射光と呼ばれる高輝度光源が物質科学に新たな展開を導いています。放射光を用いた研究手法はX線の回折・散乱・吸収・発光や光電子分光など多岐にわたっています。研究分野も金属、半導体、触媒、タンパク質、環境物質、表面界面など極めて多様です。その中で物質が示す性質(機能)を局所構造や化学状態や電子状態といったミクロな視点から分析する手法がX線吸収分光法(XAFS、ザフスあるいはエクサフス)です。X線吸収スペクトルから、物質に含まれる特定の元素に関する元素選択的・電子殻選択的な情報を得ることができます。
 本書は、XAFSの初心者や経験者にも役に立つように、実験法と解析法の基礎と応用から最近の話題まで幅広く網羅された教科書で、日本XAFS研究会のメンバー二十八名が分担執筆したものです。本学の放射光科学研究センターではXAFSによる研究も行われています。
 (大学院理学研究科教授 圓山 裕)



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