発明・特許紹介

ケイ素系高分子を利用した
導電性セラミックフィルム

文・大下 浄治
 ( OHSHITA, Joji )
大学院工学研究科
応用化学講座助教授


導電回路。中央のラインが導電性の部分。
 熱処理などによって有機材料を無機材料に変換する手法は、加工性に優れた有機材料の特質を活かした無機材料の製造法として重要です。例えば、ある種の有機高分子を紡糸した後で、加熱して無機化すると、耐熱性や強度の面で優れた無機繊維が得られます。
 ここでは、ケイ素系の高分子材料を用いた導電性セラミックフィルムの形成と微細加工について、我々が最近開発した新しい技術について紹介します。我々の研究室では、以前から耐熱性に優れたケイ素系高分子材料の開発を行ってきましたが、一連の研究の中で、これらの高分子を酸素や水のない状態で高温処理すると、炭素、ケイ素などからなるセラミックス材料に変換できることを見出しました。
 本技術は、ケイ素系の高分子の薄膜を基板上にコートした後、千度以上に加熱すると、数十〜数百nm(ナノメートル、一nmは百万分の一mm)の厚さのセラミックフィルムが得られるというものです。このフィルムは耐食性、耐候性に優れており、金属に近い電気伝導性を示します。また、面白いことに、加熱処理をする前に、空気中で紫外光を照射すると、光のあたったところだけは加熱後に絶縁体に変化して、全く電気を通さなくなります。この性質を利用すると、パターンを描いたマスクを通して紫外光照射を行うと、そのパターンに対応した導電回路を作成することが可能です。写真は、実際にこの手法を用いて作成した二十μmの線幅の導電性パターンです。酸化されやすいなどの特殊な環境で、通常の金属材料が使えないようなところでの利用が期待できます。

発明の名称:導電性材料、電子回路基板、および、電子回路基板の製造方法
発 明 者:大下浄治、九内淳堯、飯田敏行
出 願 人:広島大学長
特願2004-064789


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