:これから就職活動を始める文系学部3年生。
たけし:将来についてはまだあまり考えていない理系学部1年生。

 2人は、とあるサークルの先輩と後輩
 うーん、どうしよう…
たけし どうしたんですか、愛先輩?
 そろそろ私も就職のことを考えなくちゃいけないでしょう?就職活動では、専門性や能力だけじゃなく、「将来の夢」や「キャリアビジョン」について問われるものが多かったと先輩から聞いたんだけど、どうすればいいのか…。
たけし あのぉ、「キャリアビジョン」って何ですか?どうしてそんなこと聞かれるんですかね?
 確かに、キャリアってよく耳にする言葉だけど、いまいち意味がつかみにくいわね。あ、そうだ!たけし君、「キャリアセンター」に行ったら何か分かるかも。一緒にきてくれない?
たけし えー、なんで俺が!?

◆「キャリア」とは?
たけし 田中先生、このセンターの名称にもなっている「キャリア」ってどういう意味なんですか?

田中先生 従来、「キャリア」という言葉は、「職務経歴」「職業人としての実績」といった「職業」に関する意味を持つ言葉でした。しかし、個人の生き方への関心が深まる時代の流れで、キャリアという言葉は、職業人としてだけではなく、個人として、家庭人として、地域人として、といった生きる上でのいろんな諸活動をさすようになり、より広い意味で捉えられるようになったのです。
 人生という大きな枠組みの中で「就職」はゴールではなく通過点に過ぎません。皆さんには、就職活動そのものに主眼を置くのではなく、就職を通して自分の人生をどう構築していくのか、広く生き方全体について低学年の段階から考えてほしいですね。

◆「キャリア」に対する考えが問われる理由は?
 なるほど。「キャリア」の意味はわかったんですが、そのキャリアに対する考え方、キャリアビジョンが就職で問われるのはなぜですか?

田中先生 社会や企業は、専門性や能力があり、課題解決に向けてそれを生かすことができる学生を求めています。高度成長期には、つくる商品や提供するサービスがはっきりしていましたから、協調性があり、与えられた仕事に懸命に取り組む学生で十分でした。しかし、経済や産業構造が変化し、グローバル化、高度情報化の時代を迎えた現在、企業は、変化・競争の中でどんな商品を創造し、サービスを提供するかに必死です。また国や地方行政も、少子高齢化、地域格差拡大など多くの課題を抱えています。このような状況の中で、こういう仕事がしたい、こういう生き方をしたい、といった自分自身の生き方についてはっきりとしたビジョンを持ち、積極的に課題解決を行える人が必要とされるようになってきたのです。
◆悩むことも大事だけど…。
たけし うーん、でも、俺は自分の生き方なんてまだ分からないよ。これから何があるか分からないし、いろいろな可能性を探る、っていうのじゃダメなのかな。

 私も一、二年生の頃はそう気楽に考えてたわ。でも結局そうやって先延ばしにしてしまって、何にも変わってない気がする…。

田中先生 たけし君のような考え方を持っている学生さんはたくさんいます。多様な可能性を考えることはもちろん重要なことで、「大いに悩みましょう」ということは大前提。でも、「悩む」ということを、いつまでも進路決定をしないための口実にしてはいけません。どこかで決断して、とりあえず進むということをしないと何も始まりません。とにかく動いてみよう、実際に動いてみることで進路決定のきっかけが見つかる、悩んでいたことがはっきり見えてくる、ということもあります。「悩む」の次には「行動する」というステップがあることも忘れないでくださいね。

たけし はーい。でも、何から始めればいいんですか?

田中先生 繰り返しになりますが、「キャリア」を考えることは、生き方を考えることです。それは大学の授業だけではなく、ボランティア活動やアルバイト、留学など、様々な機会を通して考えることができると思います。自分の興味のあるものから取り組んでください。また、キャリアセンターでは「進路・職業選択」と「就職活動」に関する二つの支援を行っています。これらも、きっと二人がキャリアについて考える上で、役立ててもらえると思います。今から詳しく説明していきますね。


広大フォーラム2004年10月号 目次に戻る