広島大学の社会連携
〜運動でみんな元気倍増!
県民元気倍増プロジェクトの挑戦〜 
文・河野 修興
( KOHNO, Nobuoki )
大学院医歯薬学総合研究科
病態制御医科学講座教授

生活習慣病って何?
 最近テレビで生命保険のCMが増えていると思いませんか。女優の上戸彩さんや矢田亜希子さん、大リーグの松井秀喜選手…と昔に比べて出演するタレントも多彩になっておりターゲットが若者にも及んでいます。これは生活習慣病が年々若年化しているからです。過食や運動不足は、肥満や高血圧、高脂血症、糖尿病などの原因となり、喫煙は肺癌などの癌や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こし、飲酒は肝臓を悪化させます。過食、運動不足、飲酒、喫煙など生活習慣が引き起こす病気のことを生活習慣病と言います。肥満は年々増え続け「成人男性の三人に一人は肥満」といった厚生労働省の報告もニュースで耳にします。

なぜ〈元気倍増?〉
 私たちは、生活習慣の中で運動に注目しました。運動は肥満の解消になり、高血圧や糖尿病などの予防や治療に重要です。さらに運動はストレスを解消し気分が爽快になる作用もあり、文字通り運動により〈元気を倍増して頂こう〉と考え、県民元気倍増プロジェクトと命名しました。

県民元気倍増プロジェクト
 本プロジェクトは文部科学省の募集に応じ、広島大学と自治体(広島県、広島市、東広島市)が共同で行う地域貢献特別支援事業の一環として立ち上がり、学内の多方面の教授陣の指導の下、分子内科学教室と保健学研究科が共同で運営しています。
 軽症糖尿病患者を対象に、スポーツセンターでの定期的な運動指導を行う群(A群)、検査時の運動指導のみの群(B群)の二群に分け、加速度機能付き歩数計(ライフコーR)により運動習慣を把握し定期的な検査を行っています。十二ヵ月後までのデータによると両群ともに体脂肪率は減少しており、A群ではさらに筋肉量の指標となる除脂肪体重が増加しました。また糖尿病で血糖コントロールの指標となるグリコアルブミンが両群とも低下しています。運動負荷試験により運動の能力をみる指標の最大運動能力はA群において上昇しました。

『県民元気倍増プロジェクトに参加してよかった』
 参加者に感想をお聞きしたところ、「本プロジェクトに参加して運動を継続できた」という声が多く聞かれました。運動が重要なことはわかっていますが長続きしないのが難点であり、参加者の運動の継続に貢献できる可能性が示唆されましたので、今後の発展の方策を練りたいと考えています。

運動指導をより広く!
 広島県には医療機関とタイアップしたスポーツセンターは少なく、生活習慣病の予防のためにも、今後はそのようなスポーツセンターの実現に向けて本プロジェクトの経験やデータを活かしていきたいと考えています。
体脂肪率

グリコアルブミン


運動負荷試験 運動能力の測定や狭心症の有無を見ています。

頚動脈エコー 頚動脈の壁の厚さを見ることにより動脈硬化の程度を見ています。

検査結果の説明


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