文・金原 達夫
( KIMBARA, Tatsuo ) 大学院国際協力研究科副研究科長 |
広島大学で初めての独立研究科としてスタートして以来、国際協力研究科(IDEC:アイデック)は創立十周年を迎え、十月二十八日にサタケメモリアルホールで十周年記念式典を盛大に開催しました。 記念式典には内外から多くの方の参加をいただき、柳孝・文部科学省大臣官房国際課国際協力政策室長、上田博之・東広島市長、小和田恆・広島大学学術顧問、熊倉晃・国際協力機構中国国際センター所長、丹呉圭一・国際協力銀行理事、奥村裕一・日本貿易振興機構アジア経済研究所理事が来賓として祝辞を述べられました。 IDECの創設から今日までは、発展の基礎を築く十年であったと言えますが、この十周年式典がこれまでの歴史を振り返りつつ、構成員が将来の方向性を考え新しいビジョンを共有する良い機会となりました。その意味では、記念式典は、今後の十年に向けた新たな出発点となりました。 記念講演 記念式典に先立って、国連訓練調査研修所広島事務所長のナスリーン・アジミ氏による記念講演がありました。講演は「紛争後復興の課題:我々は過去十年に何を学んだか」について行われました。アジミ氏は、紛争後の復興、国際協力のあり方について、カンボジア、東チモール、アフガニスタンの例を引用されながら、相互依存世界における安全保障や倫理の重要性を指摘されました。 また、記念式典前日の十月二十七日には、広島大学学術顧問で国際司法裁判所判事の小和田恆氏による特別講演が開催されました。小和田先生の講演は「グローバル化する世界における国際協力」について行われました。小和田先生は、二十一世紀の世界にとって最大の問題は、グローバル化によって世界が「一つの社会」となりつつある状況の中で、国際社会がその問題にどう対処するかについて、「開発の問題」「平和と安全の問題」「環境の問題」を取り上げながら、「国際社会の公共利益」の考えに基づいた国際協力の枠組みの重要性を指摘されました。 留学生のお国紹介 三十カ国、百二十人余の留学生を受け入れているIDECは、広島大学における国際文化交流の基点ともいうべき組織であり、IDECの一面を紹介するとともに留学生の母国を紹介したいと考えて、学生による手作りのプログラムを式典に追加しました。 留学生の母国の文化や伝統をスライドショーとしてサタケメモリアルホールの大スクリーンに映し出しながら、学生自身のナレーションで紹介していきました。これに加えて、ネパールの伝統舞踊、フィリピンのダンスメドレー、インドネシアのHadrahとSajojo Danceが演じられました。インドネシアからの男子留学生十六人が見事な迫力ある演技を見せてくれました。フィナーレでは、飛び入り参加の学生が多数舞台に上がり一緒になって踊りました。各国の学生が加わったその光景は、IDECの目指す国際性と異文化間の相互理解が実を結んでいることを強く印象づけました。 祝賀会 記念式典当日の行事の最後は、祝賀会です。式典を終えた後は一転和やかな雰囲気の中で、これまでの十年についてあるいはこれからの十年について話が弾みました。吉里副学長の挨拶や研究科の創設に尽力された山下初代研究科長、戸田名誉教授、茂里広島工業大学長などが祝辞を述べられました。創設当時の紆余曲折やエピソードが語られ、今後の一層の真剣な取り組みへの期待が述べられました。 IDECが今日まで来たのはこうした方々のご尽力あってこそでしたが、あらためて将来に向けて力強く背中を押して頂き、国際協力研究科としてはその将来をしっかりと見据え、構成員が一丸となってその目標に向けて進んで行かなければならないということを認識できた記念式典であり祝賀会となりました。 |