発明・特許紹介

下水汚泥を短期間で酸発酵処理 
文・西尾 尚道
 ( NISHIO, Naomichi )
大学院先端物質科学研究科
分子生命機能科学


 都市部では、希薄工場廃水および家庭排水は下水道に集められ、下水処理場にて微生物の作用(活性汚泥処理と言います)により有機物などを除き排水を浄化しています。その結果、下水汚泥(処理後の好気微生物の塊)は現在、全国で年間一億トン(水分が九十七〜九十八%もあります)ほど排出されています。その処理法としては脱水(フィルタープレスで水分八十%程度まで)・埋め立て、脱水・焼却・埋め立て、嫌気消化(メタン発酵)がありますが、直接埋め立て処理をしたのでは埋め立て地が切迫してきている、焼却すればダイオキシンが発生しやすい、消化処理は時間がかかる(二十〜三十日)とともに大容量の消化槽を必要とする等、一長一短です。地方の市町村まで下水道が整備されれば、汚泥量は益々増加します。
 この特許は、下水汚泥を酸発酵(主として酢酸が発生します)処理する事が特長です。汚泥を可溶化する工程と有機物を効率的に酸発酵させる酸発酵工程からなります。可溶化工程では、微好気条件での曝気、アルカリ剤の添加、超音波処理を併用しての汚泥中への有機物のすみやかな溶出・低分子化を行います。酸発酵工程では、これらの有機物を短期間(三〜四日)で有機酸(主として酢酸)へと変換します。このため、本システムにおいては、汚泥中の有機物の利用効率の向上と発酵時間の大幅な短縮により、汚泥廃棄物の削減と処理システムの小型化が可能となります。また、生成した酢酸は生物的窒素除去(硝酸を窒素ガスに変換)の栄養源として利用できますし、高速メタン発酵でメタンに変換することも可能です。本システムは技術移転され、JSTで委託開発事業として開発成功の認定を受けています。

特許一
発明の名称:汚泥処理装置及び処理方法
発 明 者:西尾尚道
出 願 人:科学技術振興事業団(JST)
特願番号 :特願2001-237346

特許二
発明の名称:有機性物質の処理方法及び処理装置
発 明 者:西尾尚道、中島田 豊、中原啓介、局 俊明、辻 猛志、藤原繁樹
出 願 人:西尾尚道、日本鋼管(株)(現JFEエンジニアリング(株))
特願番号 :特願2001-369014


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