留学生の眼(102)

 日本に来て感じた事  文・金 麗花
( JIN, Lihua )
大学院医歯薬学総合研究科薬学専攻
博士課程前期2年
(中国出身)




研究室の仲間たちと(筆者前列中央)
 日本に来てもう二年半ぐらいになりました。振り返って見ると、その時々の自分の姿が浮かんできます。苦しんでいた私、彷徨していた私、泣いていた私、喜んでいた私…その中から成長していく自分が見えてきて嬉しいです。この成長には自分自身の努力は欠かせませんがそれだけではありませんでした。日本に来て初めから勉強はもちろん生活の隅々まで心をかけてくださった指導教官、および研究室のスタッフたちの親切がいつも私の大きな励みとなりました。また、いつも深い愛情で見守ってくれる両親と友達にも感謝の気持ちいっぱいです。卒業までわずか数ヶ月しか残っていません。いままでお世話になった人々のためにも、悔いのない思い出となるようこれからも頑張りたいと思います。
 日本に来てまず感じたことは様々なところで受けるサービスがとても丁寧で親切だということでした。例えば最初のころ区役所で手続きをする時、とても複雑で言葉も分からないので困りましたが役所の人の親切なサービスでうまくすることができました。そういった日本のサービス制度が一番印象的でした。
 二番目に感じたことは日本人の真面目さでした。道に迷っている私を行き先まで案内してくれた人、どこに行っても整然と並んで順番を待っている人々、約束したことを絶対守ろうとする人々…とても立派だなと思いました。私もこのようなことを目にするだけではなく自ら実践したいと思うようになりました。
 三番目に感じたことは生活の便利さでした。例えば遠い東京に行くにも新幹線に乗ったら四時間程度しかかからないし、しかも便が多くていつでもスケジュールに合わせることができます。都内の網の目ような地下鉄線もすばらしいと思います。これは経済発展国の優れた点だと思いながら自分の国も発展速度を加速化して、一日も早く国民がこんな便利さを感じるようになることを心から期待します。
 良いことばかりを感じた訳ではありません。世界で一番安全な国だとよく知られているのにも関わらずテレビで毎日のように様々な犯罪行為が報告されるのを見て驚きました。中国をよく知らない人から失礼なことを聞かれたことも時々ありました。「中国人はみんな日本のことを恨んでいることを知っています」と言う人もいました。
 しかし時間が経つにつれて日本という異国への新鮮感もなくなり、だんだんいろいろなことに慣れてきました。良いか悪いかをはっきり言うことは難しいですが、ここは日本、これは日本の文化、これは日本人の考え方だと思いながら受け入れるようになりました。例えば外国人にはややこしすぎる礼儀のこととか複雑なマナーとか、今でもよく知らないで自分勝手にしているけれど、気にすることが少なくなりました。一番残念だと感じたことは日本人と接する中で真誠な心の触れ合いができなかったことです。他の国から来た人からもよく聞きましたが、日本人との間に存在する厚い無形の壁を実感しました。ますます国際化が進む時代には国境と文化の違いを越えて、人々の交流に自分自身から心をもっと開いて心の触れ合いを求めて行くことが必要ではないかと思います。
 いままで経験していなかったことがいっぱいあっても日本に留学生として来てとても良かったと思います。私のこれからの人生にとって貴重な経験であり、良い思い出となることでしょう。これからももっと日本語を勉強し、日本を知りたいと思います。心を開いて感謝の気持ちを大事にしながら自己中心的な自分を変えていきたいです。そして目標をたて、情熱をもって充実した日々を送りたいと思います。
( 原文・日本語)


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