文・三根 和浪

 ( MINE, Kazunami )
広報委員・大学院教育学研究科助教授

 表紙やフォーラム・ギャラリーといったビジュアル・ページは、「ヒロダイ」の持つ有形無形の財産群を、分かりやすく読者の皆さんに伝え、よりよいイメージを持ってもらう、そんな効果をねらって編集されてきました。ここで使われた美術や人などは、単にそれが紹介されているというのではなく、そのものの向こうに見えてくる「何か」を感じてもらいたいという願いが込められています。

表紙/美術・造形作品等を使って
 前身である『学内通信』(1969年創刊)から1989年に『広大フォーラム』が創刊され現在に至るまで、ビジュアル・ページとしてのデザイン上最も大きな転機は、1993年の第307号(今号のフォーラム・ギャラリーを参照して下さい)にあったように思われます。全面に美術作品を用いた画期的な表紙は、学校教育学部美術教育卒業の内山環氏の作品です。誌面全体を実際以上に大きく広がりのあるものに見せるとともに、作品を構成する多彩な色と線が、賑やかな音を奏で、同時に人目を引く効果をもたらしています。表紙の劇的な変化に携わったのは、当時の学校教育学部の若元委員でした。
 その後、理科系の研究室から提供された美を感じさせる科学写真、附属学校園の幼・小・中・高校生の造形作品など様々な素材が用いられました。ご存じの通り、広大は十一もの附属学校園を持つ全国有数の大学であり、また「教育」はヒロダイ最強のブランドでもあります。附属学校園の子どもたちの思いのこもった「存在の証明」は、学内だけでなく、学外からも大きな好評を得ることができました。


「卒 業」〜はばたく時〜
2002.2.4(No.368)


「雅」〜ステンド・グラス 附属中学校〜
2002.7.25(No.371)
表紙/「顔」が見えるヒロダイへ

 2001年度からは、学内のさまざまな活動の表情やクラブ活動の様子を写真で採りあげています。キー・ワードは「人」。そう、ヒロダイ最大の財産です。ヒロダイでは、人が教育を受け、人が教育を行い、人が研究や社会連携を行ったりそれを支えたりしています。これまでも、学内行事等を伝える写真が表紙で使われ、人が写っていたことはありました。しかし、その対象はあくまで行事そのものであり、人物は被写体として匿名性が高いものでした。これからの時代の広島大学のFORUM(広場、公開討論会)という性格をふまえて、「人の顔」や「生きざま」が見えるデザインにしたい、そのために「顔」の見える人に登場してもらう、そのことによって、躍動感のあるヒロダイが表現できると考えているのです。

フォーラム・ギャラリー

 美術に関するものを中心に、読者の皆さんに安らぎの場を提供して好評を博しているのが、「フォーラム・ギャラリー」です。美術を専門とする教員や学生の作品を展示するというだけでなく、美術制作とは全く関係のなさそうな仕事をされている教職員からの数多くの作品提供を受けることができました。趣味の域を超えた芸術性の高さ、着眼点の非凡さに驚かされるとともに、仕事だけに埋没しているのではない、人としてのヒロダイの層の厚さ、そして豊かさを感じさせられます。
 ヒロダイが持つ日本一、世界一の「天上の星」、これらはもちろん大きな財産であり誇りです。しかし、ヒロダイに確かに存する無数の「地上の星」、これらこそがヒロダイを成立させ動かしていると、私は確信しています。それは、実力と実績がありながら注目されてこなかったということだけではありません。そういう価値観とは違ったところで、目立たなくともかけがえのない役割を果たしている姿、そして今を懸命に生き抜き大きな飛躍を期待させる姿などであり、そんなヒロダイにも誇りを持っていたいのです。広大フォーラムが一つの区切りを迎える今、振り返ってみるとやはり、ビジュアル・ページはヒロダイにおける地上の星を探し続ける営みであったように思います。読者の皆さんがこれら地上の星のきらめきに気づき、ヒロダイの今に誇りを持って下さったとすれば存外の喜びです。


広大フォーラム2004年12月号 目次に戻る