文・アリフ・ファディラ
( Arif Fadillah)
大学院国際協力研究科
開発科学専攻博士課程後期2年
 (インドネシア出身)
ヘル・マルハント・ウトモ
( Heru Marhanto Utomo )
大学院国際協力研究科
開発科学専攻博士課程前期2年
(インドネシア出身)

広島大学のインドネシア留学生たちは、経済的な理由から正規の教育を受けられない児童・生徒に対し、広く教育の機会を提供する活動を行っています。その活動の精神は、五十年前インドネシア留学生協会が東京に誕生して以来、脈脈と受け継がれてきたものです。本文では、その経緯と活動の内容について、紹介します。


同窓生たちが発起人となったダルマ・プルサダ大学とは

インドネシア・チャリティー・ショー(2002)の1コマ
 日本で学ぶインドネシア留学生の相互交流をはかるため、インドネシア留学生協会(PPI- Japan)が一九五三年七月東京に設立されました。以後、各地でその支部の設立が相次ぎました。
 インドネシア本国においても、日本で学んだ同窓生が増えるにともない、日本留学中の学生・研修生および同窓生との親密なネットワークを築く必要性がでてきました。そのため、1963年7月17日、ジャカルタにおいて、日本留学生同窓会としてPERSADA(プルサダ)が設立されました。
 プルサダは、その活動に賛同してくださったインドネシア政府および市民の方々からの協力を得て、1986年7月6日、ダルマ・プルサダ大学(UNSADA)を設立しました。
 プルサダ大学は当初、簡素な校舎ながらも、インドネシアに人材育成の場としての大学を創設する、との同窓生の一途な思いから誕生しました。この大学は、同窓会組織であるプルサダによる草の根的な活動が、政府や一般市民をも動かし、ついには大学設立に至ったというモデルケースになりました。ちなみに私、アリフ(共著者の一人)は、プルサダ大学の同窓生です。
 プルサダ大学の校章には、大学設立の経緯を反映してか、日本になじみのある桜のマークが入っています。
(ダルマ・プルサダ大学ホームページ http://www.unsada.ac.id/

在広島インドネシア留学生協会による奨学金プログラム
 在広島インドネシア留学生協会(PPI- Hiroshima)も、インドネシア留学生協会支部のひとつとして、広島で学ぶ留学生の相互交流のため活動しています。
 在広島留学生協会が推進するプログラムのひとつに、学習意欲と才能にめぐまれながら、経済的な理由から勉学の機会をもつことのできない児童・生徒に対して奨学金を給付する、というものがあります。インドネシアでは、近年の経済危機により、さまざまな問題を抱え、多くの子供たちが正規の教育を受けられない状況にあります。このプログラムを通しての奨学金は、一人あたり年間四千円と少額ですが、一九九九年以来、これまでに毎年およそ二百人のインドネシアの児童・生徒に奨学金を給付してきました。
 本奨学金プログラムは、おもに1999年、2002年に広島アステール・プラザにて催されたインドネシア・チャリティー・フェスティバルの収益金で運営されました。なお、このイベントの目的は奨学資金を賄うことはもちろんですが、日本に広くインドネシアの文化を紹介することでもあります。イベントのステージを飾ったのは広島大学のインドネシア留学生と日本の有志の方々です。1999年、2002年にそれぞれ百五十万円、百万円の収益がありました。加えて、広島で催される幾多のイベントに参加される日本の方々や日本に住むインドネシアの方々が、個人、団体を問わず寄付してくださり、この奨学金プログラムは成り立っています。
 近時では、これまでのイベントと比べ規模は小さいものの2003年8月17日に東広島中央公民館にて、広大のインドネシア人留学生が主催するチャリティー・イベントが行われました。それは、五十八回目となるインドネシア独立記念日の祝福と、これまでのイベントと同様、奨学資金を賄う趣旨で開催されましたが、およそ二十万円の収益金が集まりました。このイベントでは、インドネシアの伝統的な舞踊あるいは料理、アクセサリーの販売、またインドネシアの伝統的衣装をまとっての写真撮影会が行われました。
 以上のチャリティー活動は、即座にその成果を期待できるほどやさしいものではなく、困難も伴います。ただ幸いにも広島インドネシア留学生協会は、構成員やその家族にめぐまれ、またインドネシア大使館(東京)、インドネシア総領事館(大阪)、在広島インドネシア協会、Anyaman Kasih財団および広島在住の方に限らず、日本の市民の方々の協力を得て、その活動を行っています。
 私たちは、この奨学金プログラムがこれからも、すこしでもインドネシアの子供たちの未来のために、役に立てることを願っています。
(在広島インドネシア留学生協会奨学金プログラムに関する情報
 http://www.geocities.com/beasiswa_ppihiroshima/

 インドネシア留学生協会はその設立からはや半世紀を迎えました。私たちはこれから先、インドネシア留学生・同窓生によるネットワークの広がりに呼応するようなかたちで、留学生協会の活動にさらなる可能性が拓けることを信じています。 (原文・英語)

日本語訳:谷口 淳
(大学院国際協力研究科開発科学専攻博士課程前期二年)


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