PROFILE | ||
1977年 | 島根大学文理学部理学科卒業、 広島大学附属図書館に就職 |
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2003年 | 広島大学大学院教育学研究科 博士課程前期修了 |
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2004年現在 広島大学附属図書館情報サービス課 西図書館情報サービス係長 |
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開 | か | れ | た |
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学 | 問 | (98) |
図書の分類法 | 文・野村 正人 (NOMURA, Masato) 附属図書館情報サービス課 西図書館情報サービス係長 |
図書館は膨大な知識、記録の集積所です。保存だけでなく利用者の求めに応じてすぐに引き出されるようにしておかなければなりません。そのための技術が目録や分類です。この技術は時代とともに発達してきましたし、図書館・情報学においても重要な研究領域です。 アレクサンドリア図書館 パピルスの巻物収集で有名なアレクサンドリア図書館(紀元前240年頃)は、70万巻を揃えていたと言われます。図書を詩人、法律家、哲学者、歴史家、雄弁家、その他に六分類した分類目録がありました。 十進分類法の考案 独立を果たしたアメリカでは、一般民衆の図書館熱が高まってきます。当時の図書館は、図書を置く書架が図書の分類を示していました。書庫の増築や移転の時などは分類をやりなおさなければならず大変な作業になります。このようなとき、メルヴィル・デューイは1876年十進記号法による分類法を考案します。書架とは直接関係しない分類番号を与えるのです。デューイ25歳の時の仕事です。デューイはこの後32歳でコロンビア大学の教授、さらにはアメリカ図書館協会設立の中心人物になっています。彼の十進分類法はアメリカ公共図書館の大衆化に大いに貢献したものと思われます。 この十進分類法は今もよく使われており、アメリカの公共図書館、学校図書館の95%、大学図書館の25%で採用されています。十区分は、〇総記、一哲学、二宗教、三社会科学、四言語、五純粋科学、六技術、七芸術、八文学、九地理・歴史となっています。言語と文学が離れて地理が最後です。区分は現在の日本十進分類法と大体同じですが、順番が違っています。また宗教についてみると220〜280がキリスト教に充てられており、あくまでも西欧中心の分類法です。 日本十進分類法の登場 デューイの分類法は明治25年、日本に紹介されました。日本の図書館界は主題の配列順に満足できず、最上位の十区分の順番を組み替えて独自の分類表を作ろうとします。昭和四年に「日本十進分類法」(表1)が発表されます。
構造が簡単なので理解しやすいし、数字のみなので記憶や図書を並べるのに便利であると言われています。しかし世の中の図書を無理矢理十区分している感は否めません。分野によっては十区分以上に分けた方がいいものもあるし、四か五区分ぐらいに分けた方がすんなり理解できる主題もあります。例えば「医学」は自然科学の中に、あたかも数学や物理学と同じレベルが与えられていますが、十という制約がないのであれば、自然科学と同列に扱われるべきレベルであり、実際の出版点数からいってもその方が妥当です。
その後、国立国会図書館は文献量の増大という現実の前に独自の分類法(表2)を作成し、一九六八年から採用することになります。アルファベットと数字の組み合わせによる非十進記号分類法です。蔵書量の多い大学図書館にとって、魅力ある分類法のひとつです。東北大学附属図書館と京都大学附属図書館がこの分類法を採用しています。 国際十進分類法 デューイ十進分類法、日本十進分類法の欠点のひとつに、複合主題の図書であってもひとつの分類しか与えられないということがあります。そこで主分類表と補助分類法の組み合わせにより複合主題を多面的に表現しようとしたのが国際十進分類法です。例えば『鯨の保護』は、主分類表で「鯨」、補助分類表から「漁獲制限」の組み合わせで分類されます。学術論文を対象とする書誌分類法として科学技術分野でよく使われており、日本では科学技術振興機構の発行する「科学技術文献速報」に用いられています。 なお、この国際十進分類(UDC)は、デューイ十進分類(DDC)、米国議会図書館分類(LCC)とともに、インターネット上の情報を統一的に記述しようと作られた規則Dublin Core(図1)の中でも使われています。Dublin Coreは、2003年2月に国際標準(ISO一5836)になりました。 参考ウェブサイト http://dublincore.org/ http://www.kanzaki.com/docs/sw/dublin-core.html
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新刊図書に表示してある書籍分類コード(図2)をみると、分野の分類は二桁です。分類を細分化せずに、特定主題の中では売れ筋商品を平積みにしたり、目立つ棚に配置するなど工夫をしていると思われます。 使いやすい図書館に 図書館における分類の細分化は、整理のためではあっても、見た目の分かりやすさを損う(小説と随筆が同一作家でも「分類」のために散在してしまう)ことがあります。 本を貯蔵するための書庫における分類と広く利用の便をはかるための開架図書の分類が、違っていてもよいのではないか、という利用者の意見もあります。そういう意見もふまえながら、これからも利用者にとって使いやすい図書館であるように、努力していきたいと思います。 |
PROFILE | ||
1977年 | 島根大学文理学部理学科卒業、 広島大学附属図書館に就職 |
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2003年 | 広島大学大学院教育学研究科 博士課程前期修了 |
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2004年現在 広島大学附属図書館情報サービス課 西図書館情報サービス係長 |