文・弓削 孟文
( YUGE, Osafumi )
理事・副学長(医療担当)


霞キャンパス全景(赤枠で囲んだ7階建ての建物が霞総合研究棟)
 平成十六年四月十五日(木)の中国新聞に、広島大学大学院医歯薬学総合研究科の先進医療研究や産学官連携の研究を行う広島大学の拠点として「霞総合研究棟」が完成し、動き始めている…と報道されました。
 この総合研究棟は、旧東病棟(八階建て)を約十五億六千万円かけて改修し、新たに、全く違う『研究施設』として再出発させたものです。しかも、霞地区だけでなく、広島大学全体の研究拠点として、さらには社会と連携した研究を行う場として、当初から計画されたものです。
 平成十六年四月、国立大学が一斉に法人化するという一大イベントの最中、静かに実験機器などの移転を行い、少しずつ運用を開始していたところですが、大きく覆われていたテントがはずれ、あたかも新築された建物か?と見間違うほどの美しい全容をみて、また、建物内の充実ぶりを目の当たりにして、新たな気持ちで霞総合研究棟の開所式を計画いたしました。我々広島大学としては、霞総合研究棟のスタートは、開所式を行った日である五月十七日(月)としています。
 さて、この霞総合研究棟は七階建て、総面積約九千平方メートルで、一階に広島大学自然科学研究支援開発センターと社会連携推進機構のカウンターパートがあり、特許取得やベンチャー企業設立の相談を受け持っています。また、整備されたDNA解析室などもあります。二階には、フロンティアラボ(ベンチャーラボ)、三階にはプロジェクトラボが入り、産学官連携の研究を展開しています。現在のところ、二階と三階には合計十八グループが最大五年間の期間で入っており、すべての部屋が埋まっている状況です。四階から上は、医歯薬学総合研究科と原爆放射線医科学研究所の研究室となっており、生化学研究、免疫学研究、薬学研究、腫瘍学研究などの研究室が同居するかたちで入り、既に研究室の移転も終了して、共同研究も円滑に行うことができる体制になっています。
 この霞総合研究棟は、大学全体で運用し、研究を大学内のみで行うのではなく、広く社会と連携して共同で研究開発を行う「場」であることから、これまでの国立大学では成し得なかった新しい大学の役割を追求することができるものです。
 霞総合研究棟が広島大学の"新たな試みの第一号"として発展することを、心から祈らずにはおられません。

7階 医歯薬学総合研究科探索医科学講座(心臓血管生理医学、免疫学)
6階 医歯薬学総合研究科探索医科学講座(医化学、分子細胞情報学)
5階 原爆放射線医科学研究所(腫瘍外科、遺伝子診断・治療開発)
4階 原爆放射線医科学研究所(計量生物)、医歯薬学総合研究科病態薬物治療学講座(臨床薬物治療学)、医歯薬学総合研究科先進医療開発科学講座(分子治療・デバイス学)
3階 プロジェクトラボ(様々な分野の学内研究者によるプロジェクト型研究のために場所を提供するフロア)
【研究テーマ】  ※カッコ内は研究チームの代表者
幹細胞生物医学の基礎研究(福嶋 久) 抗アレルギー・育毛技術の開発
皮膚・肝臓・骨髄・再生医学に関わる融合的生物医科学研究の展開(秀 道広)
間葉系幹細胞の増殖能他の分子基盤の研究(加藤幸夫)
肝臓の生態、病態に関する治療開発の応用研究他(茶山一彰)
2階 フロンティアラボ(ベンチャーを対象とし、学外研究者又は研究グループに場所を提供するフロア(レンタルラボ)
【研究テーマ】  ※カッコ内は研究チームの代表者
歯根膜の再生及び歯の冷凍保存の確立と実証研究(河田俊嗣) バイオ質量分析機、ビデオ顕微装置等の開発と事業化(升島 努)
生体侵襲物質動態解析システムの構築(木村垣二郎) 次世代医療解析開発プロジェクト(神辺眞之)
放射線災害医療開発の先端的研究拠点(神谷研二) 合同秘書室及び産学プレインキュベーション室(大濱絋三)
ゲノム薬理学的抗癌剤臨床開発他(西山正彦) 酒粕等を利用した機能性キノコの生産技術開発(杉山政則)
幹細胞培養装置、細胞移植技術の開発・製品化(弓削 類) 微生物の探索・基礎研究と産業への応用(杉山政則)
細胞接着分子を標的とした分子病態の解明他(横崎恭之) 骨髄間葉系幹細胞を用いた四肢再生の研究(越智光夫)
次世代医療デバイス開発センター(末田泰二郎)
1階 オフィス、自然科学研究支援開発センター


広大フォーラム2004年8月号 目次に戻る