文・佐々木 康
( SASAKI, Yasushi ) 地域防災ネットワーク構築事業統括責任者 大学院工学研究科建設構造工学講座教授 |
中国地方には花崗岩の山地が広く分布し、古くからデルタや埋立地の上に街が発展してきており、近年では丘陵地や山裾まで市街地が広がっています。このため、地震や集中豪雨による自然災害を被り易い状況にあります。 現小泉政権の掲げる「骨太の方針」(平成十六年六月四日閣議決定)にも「誰もが豊かな自然と共生し、安全で安心に暮らせる社会の構築」が挙げられ、災害に強い社会の構築のため防災力向上が大切であると謳われています。 地域防災ネットワーク 広島大学では、平成十四年に文部科学省が創設した「地域貢献特別支援事業費」を用いて「地域防災ネットワーク構築事業」を進めています。このプロジェクトは、広島大学が広島県・広島市・東広島市と連携し、大学が擁する知的資源を最大限に活用し、地域の防災力向上に貢献すべく災害軽減のためのネットワークを構築しようとするもので、今年は三年目にあたります。 地域貢献特別支援事業とは、文部科学省が国立大学の地域貢献への取り組みを推進強化するために開始した事業です。広島大学は、この事業に応募した全国八十余の国立大学のうちから、第一次支援対象の五大学の一つに選定されました。現在、地域の教育、健康、産業、平和、安全、連携等に関わる六事業が実施されており、本事業は「安全」に関するものです。 広島大学の取り組み 学内では総合科学部・文学研究科・理学研究科・工学研究科・医歯薬学総合研究科・国際協力研究科の教員・研究者らが共同し、これまでの二年間に ・災害発生に関する実証データの収集とデータベース化 ・災害発生メカニズムの解明 ・災害を予測する技術 ・防災力の向上 などに取り組んできました。 また、防災力の向上を目指し、地域の防災行政機関とのより高度な協働作業推進のため、東広島キャンパスの先端科学総合研究棟内に災害情報解析室を設置しました。ここには広島市地震情報ネットワークシステムとのホットライン端末、広島県震度情報ネットワークシステムから地震波形を収集・蓄積するシステムなどが置かれ、地震観測のネットワーク基盤が整備されています。 データベースサーバには、平成十三年三月の芸予地震による被害箇所分布図、平成十一年六月二十九日の大雨土砂災害時の崩壊箇所分布図、中国地方の活断層分布図、宅地造成地の切盛区分データ、広島花崗岩の粘土細脈分布図、局所的な地形影響を考慮した風向別風速分布図などを蓄積しています。 これらのシステムや、災害履歴等に関するデータベースを活用することで、発生した災害の特徴をすばやく把握し、対応することが可能になります。 これからの展望 平成十六年度には、これまでに整備したデータベースをさらに充実させ、災害時に時々刻々得られる観測データの迅速な分析とそれらの配信のための新たな仕組みを創設するとともに、災害軽減に関する知識普及のためのシンポジウムを継続的に開催するなど、自立して永続的に活動できる二十一世紀型の地域防災ネットワークを構築し、災害軽減に貢献することを目指します。 地域貢献特別支援事業ホームページ http://home.hiroshima-u.ac.jp/koken/ タイトルの写真は、芸予地震の際に発生した広島市西区、三菱重工グラウンドの液状化現象(中野菊実さん撮影) |