文・冨永 昇助
( TOMINAGA, Syousuke ) 大学院社会科学研究科 博士課程前期 |
古希を迎えてフェニックス院生をしています。E・エリクソンは「自分とは何か」との問いかけを、人生の「青春期」と「高齢期」の二度行うといっています。私も己を振り返り、総合科学部の「石倉ゼミ」の扉を叩きました。 六年前(1999年)に、原爆手帳を所持する元広島大学事務官(退職時主任)だった、疎遠のシングル叔母(84才)への電話が繋がらず、痴呆による生活破綻と消費者被害を知ってから物語は始まりました。 彼女は六人のきょうだいで、他に現存者はわが母(94才)だけで、私はと言えば民生委員への緊急通報登録順位は叔母からすると六位でしかなく、訪問経験もなく京都からの遠距離支援体制の構築は難渋しました。 ゴミの山と天井まで積みあがった呉服箱の傍らには、岡山簡易裁判所から十日位前に届いた百万円の取立ての不出頭結審判決書が転がり、数年来、料金の不払いで生活ラインの供給停止が繰り返されていました。 叔母の老後に備え貯えた全金融資産の数千万円は、五年にわたり呉服の展示販売業者相手の「消費者被害」で底をつき、業者は銀行等に叔母と連れだち販売金を回収し、預金通帳も預かり状態でした。しかも品物の半分はなく、紙屑の伝票には若い娘の着る「色留め袖」が何着もあります。支給停止された年金は業者が手続を指導し、復活した支給金はその日のうちに四国・松山市で第三者が出金し、年金の支給日にあわせ「次々販売」がおこなわれ、また多額の満期生命保険金預りもあり、これは異常を察知した出入りの保険会社の担当者から民生委員に「近々大金が出るが、ごまかされる恐れがある」と届けられていたものでした。 75才以上の単身高齢者は全国150万人で、そのうち子どものないシングル老人は5.6%ですが、政令指定都市では九%になり、また老人の痴呆発現率は75〜79才で7%、85才以上では、27%にもなります。160万人の全国痴呆高齢者も女性が多く(75%)、シングル女性の後期高齢者は高いリスク状態におかれています。高齢者の15%は他者の支援なしには安全な生活が営めません。従来は家族がサポートを果していましたが時代は変遷しています。また、年間一万人位就任する成年後見人の内訳で「ひとり暮らしの人」の占める割合は七%位にすぎません。 今後欧米並みに一般化していく日本社会のひとり暮し老人のリスクを象徴する本事例です。2000年9月に、京都で講演中の石倉先生との出会いから支援を受け、身上監護と消費者被害回復が前進し、中国新聞報道・NHK大阪の「高齢者虐待」番組報道にもなりました。 広島市消費者センターの仲介による、成年後見人の私と販売業者との話し合いは難航し、県の「救済委員会」開催には、業者は出席を拒みました。「女性」・「児童」に次ぐ「高齢者法の制定」は必要です。アメリカでは1965年に「高齢者法」が成立し、日本でも、今年(2005年)は「高齢者虐待防止法」の成立がめざされています。 これらの事実を幅広く知っていただくため「ひとり暮らしの高齢者を考える会」のホームページを立ち上げたいと考えています。どなたかホームページ作成を手伝って下さる方を募ります。 連絡先 t0810@hiroshima-u.ac.jp |
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