生物生産学部附属練習船
豊潮丸二等航海士
磯村 公三さん
豊潮丸に乗って35年。
やっぱり海が好き。

磯村さんの仕事場、豊潮丸。デッキに干された洗濯物が生活感を漂わせている。
―磯村さんはどんなお仕事をされているんですか?

 乗船中は、船の運航と船上での実習・調査の手伝いを主に担当しています。しかし、船の乗組員は十二名しかいないので、あらゆる事態を想定して、自分の担当だけでなく、いろんなことができるようにしておかなければなりません。船の上ではマルチ人間が好まれるのです。今年度は、瀬戸内海、四国、九州、沖縄、南西海域、そして韓国へ航海しました。以前は日本を一周して、さらに中国、韓国まで航海に行ったこともあります。

―航海士になろうと思ったのはなぜですか?

 小さい頃から遠くへ行きたい、という憧れがあったからです。あと、昔、船員さんが着ていた白い制服にも憧れていました。しかし、白い制服は汚れやすく、経済的ではないので今は着ません。

―航海士の仕事をやっていてよかったことはなんですか?

 自然の美しさに触れることができることです。朝日や夕日、岬や突端に立つ白亜のライト・ハウス、コントラストが鮮やかな海など、普段の陸の生活では味わえない自然にふれると癒やされますね。それから調査が終わった後、学生さんから「ありがとうございました」の一言をもらったときも、やっていてよかったなぁと思う瞬間です。

―船にのっていて大変だったことはなんですか?

 時化ですね。特に台風の時は危ないので、船内に水が入らないように、転覆しないように、座礁しないようにと常に緊張していなきゃいけません。波の高さが十メートル以上の度肝を抜くような高い波を経験したこともあります。太平洋を一人で横断する人がいますが、私にはこうした経験があるので、とても怖くてできませんね。

―海での生活と陸での生活、どちらが好きですか?

 もう三十五年も豊潮丸に乗船して今ごろ、楽しさや美しさが僅かばかり理解出来るようになりました。航海中は、今度陸に上がったらあれをしよう、これをしようと考えることもありますが、船に乗っているときも、美しい景色を見られる、釣った魚をその場で調理して食べる、などの楽しみもあります。マイ包丁を持っている人もいるんですよ。自然が相手だと楽しいこともたくさんあるんです。楽しいからこそ、長年この仕事を続けてこられたんでしょうね。
取材・執筆  夫津木芳美(総合科学部三年)

*このコーナーでは、広大で働いている職員にスポットをあて、学生広報スタッフが取材を行い、その方の人柄や仕事内容などを紹介します。


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