広島大学から排出される固形廃棄物(ごみ)の
管理・利用システム(提案)─2─
文・正藤英司(Shoto, Eiji)
中央廃液処理施設助教授

 前号に、東広島キャンパスから排出される各種固形廃棄物(ごみ)を、一定期間徹底的に分別収集・計量・調査し、その内容と量を算出、あるいは推定して図1に示した。又、分別収集することにより比較的簡単に、比較的低コストに、焼却あるいは埋め立て処分することなく再資源化できる方法(古紙、廃金属、廃ガラス類)について述べた。
 固形廃棄物はできるだけ発生させない。分別収集してできるだけリサイクルする。リサイクルすれば結果的にごみは減量化できる。東広島キャンパスから排出される各種の固形廃棄物は、これまでどの程度がリサイクルされてきたであろうか。全国平均に比べてどの程度であろうか。又、リサイクル率をより向上させ、その結果ごみ量を減らすにはどのような手法を講じるべきかについて以下に論じる。



各種素材のリサイクル率

 国内での各種素材のリサイクル率はどの程度であろうか。図6に 示す通りである。古紙類は五三・三%が再生パルプとして、金属類はアルミとして 六五・七%、スチールとして七三・八%、ガラス類は六一・三%がカレットとして 、それぞれの用途の資源にリサイクルされている。これらはリサイクルが容易な素 材ではあるが、より良質な資源としてリサイクルするためには素材別分別収集をよ り徹底することが必須である。
 学内でのリサイクル率は、いかほどであっただろうか。
図6

 各種古紙類は平成七年度から再資源化を目的とした分別収集の試行を開始してき た。そして、平成八年度の一年間に一〇〇トンの各種古紙類を収集し、各品 位の再生パルプとしての再資源化を業者に委託してきた。筆者らは、東広島キャン パスから排出される各種古紙類の総量は、二〇〇トン位でリサイクル率は約 五〇%強の全国平均であろうと推定している。分別収集した残りの約一〇〇 トンの各種古紙類はどのようになっているのだろうか。約一〇〇トン の内訳は機密文書類、メモ紙と分別されないで、燃えるごみとされ焼却されたであ ろう。機密文書類そしてメモ紙等は裁断すればすでに機密物ではない。収集すれば リサイクルできるので、分別収集する必要がある。
 雑誌類には無駄が多い。学会誌など必要部数だけ発行されてはいかがだろう。人 の手に触れることなく、そのまま廃棄されている物が多すぎるようだ。漫画等の廃 棄が多すぎるようだ。しかも同じ漫画、雑誌類が何冊もあり、無駄が多すぎるよう だ。回覧読みとかを考慮したらいかがだろう。少し考慮すればリサイクル率は向上 し無駄が抑制できよう。
 これまで、金属類は収集し、処分を業者に委託してきている。ほとんどが埋め立 て処分されているのではなかろうか。平成八年度に委託処分された金属ごみの容積 から重量に換算した。アルミとして二・二トン、スチールとして三七・七 トン、合計四〇トンが収集され業者に委託し処分されている。貴重な 金属資源を埋め立て処分等により消滅させてきたことになろう。キャンパスから排 出される金属類は、年間六〇トン位であろうと筆者らは見積っている。再資 源化を目的とした業者委託をしていれば、又委託業者が自主的にリサイクルしてい れば、リサイクル率は約六五%位で全国平均であろう。分別収集の上処分した残りの約二〇トンは、他の分類に混入され焼却 又は埋め立て処分されたであろう。分別収集をより徹底させ再資源化を目的とした 業者委託をすれば、リサイクル率と回収率は向上できよう。
 ガラス類は一四・五トンが業者に委託処分された。キャンパスから排出さ れるガラス類は、年間二〇トン位であろう。収集して再資源化を業者に委託 していれば、リサイクル率は約七〇%位で全国平均であろう。分別収集した残りの 約五トンのガラス類は、他の分類に混入され埋め立て処分されたであろう。
 不燃ごみ(廃プラスチック類)は四八トンを収集し、業者に委託処 分されたことになる。東広島キャンパスから排出される不燃ごみ、特にプラスチッ ク類は、年間九〇トン位排出されていると見積りしているので、回収率は約 五三%となろう。収集した残りの約四二トンの不燃ごみ類は、燃やせば燃え ることから学内の焼却炉で焼却処理されたであろう。
 廃プラスチック類は、固形燃料及び液体燃料としてリサイクルしたり、焼却し熱 源として利用する研究が推進されているが、いろいろ課題がありまだ評価できるま でには至っていないようだ。現況では再資源化は困難であるため、取り敢えず埋め 立て処分することとし、そのためには減容化して排出する指導と教育が必要である と考える。   


再資源化困難な固形廃棄物の再資源化・再使用法

 次に、再資源化困難な廃棄物と少々手をかける必要のある固形廃 棄物のリサイクル法と処分法について述べる。
草木残さ類
 広大な土地を有する東広島キャンパスは当然ながら草類の生長が著し いため、年間三〜四回の草刈りが必要と考えられている。
 これまで、草刈りした廃棄草木は集積し、焼却、委託処分、投棄されてきている 。キャンパス内で草木の焼却、投棄をなくする目的から、草木類の堆肥化によるリ サイクル法を専門委員会で考えた。そこで、平成七年度には、施設部の計らいがあ ったことから、試験的に理学部植物園内に堆肥化施設を設置し、多数学部の範囲か ら集めた草刈り後の廃棄草木の堆肥化試行を行い、素晴しい堆肥を得て菜園等に施 肥する成果を得た。
図7

 平成八年度には、平成七年度の堆肥化試行の結果、堆肥化施設の容量不足に気付 き、学内の五か所に集積・堆肥化する堆肥化施設を設置した。これからは、計六か 所の集積・堆肥化施設を利用して、各部局で草刈りした廃棄草木を集め、堆肥化に よる再資源化を実施することができるようになった。適切かつ有効な堆肥として再 資源化でき、桜等に適切な施肥ができるであろう。
 堆肥化施設の活用方法は、草刈りした草木を集めて堆肥化施設まで搬送し、ポリ 紐、ポリ袋等他のごみを除き積み上げる。そして時々積み返す。約半年経過すれば 有効な堆肥ができあがる。できた堆肥は適切に施肥するなどである。堆肥化施設の 活用方法を文章にすれば、前述の通り非常に簡単であるが、実際には積み返し作業 、施肥作業等の管理は大であり全構成員の協力が必要である。全構成員の協力を得て有効な活用を心掛け運 用したい。又、そのためのレンジャー制度を専門委員会で検討している。

廃試薬ガラス瓶類
 これまでに廃棄されてきたガラス瓶類のうち廃試薬瓶が約四〇%ある 。廃試薬瓶のガラス素材としては、透明ガラス瓶、茶色着色瓶、青色着色瓶等であ る。廃試薬瓶の量は、試薬を利用する研究の活発さを示すバロメーターである。こ れまで、試薬瓶類は業者依託により埋め立て処分されてきている。ところが、廃試 薬瓶の回収時に悪臭の発生及び引火等の問題が頻発し、回収作業中の作業環境保全 と作業中の安全確保の目的から回収業務を業者に拒否されるところまで発展してき ている。
 廃試薬瓶の廃棄処分時の悪臭発生及び引火等の問題は、試薬が残っているにもか かわらず廃棄する等、試薬及び試薬瓶の取り扱い不備と不心得により発生している ので、試薬は残らず使用し、試薬瓶の廃棄前には洗浄し乾燥する等の教育をより徹 底させる必要があろう。できれば、洗浄・乾燥後の試薬瓶を試薬製造業者に返還し 、試薬瓶として再使用できるようにするべきとも考えている。



再資源化困難な固形廃棄物の再使用法(提案)

 再資源化困難固形廃棄物は廃棄プラスチック類と焼却残灰であろ う。廃棄プラスチック類は素材別の分別が困難であり、焼却すれば大気汚染の懸念 がある。プラスチック類を埋め立て処分すれば廃棄物の埋め立て施設の容積を占有 する懸念がある。
図8

 焼却残灰は、これ以上減容化できないまでにコンパクト化した残物であり、埋め 立て処分するしか方法のない物である。そこで、筆者らのこれまでの研究成果「有 害物質のプラスチック固定法」を利用した検討を実施したので、その焼却残灰と廃 棄プラスチック類による遊歩道用タイルの製作について提案する。
 各種プラスチック類の軟化点又は融点は、ポリエチレン=一〇〇〜一二〇度、ポリプロピレン=一五〇〜一六〇度、ポリスチレン=八〇〜一〇〇度、ポリエチレンテレフタレート=二六四度、ポリ塩化ビニル=七〇度、ポリ塩化ビニリデン=二〇〇度である。又、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等塩素系のプ ラスチック類と特定の有機物の存在下で二五〇度以上で燃焼すれば有害ガスが発生する可能性がある。
 そこで、「有害物質のプラスチック固定法」研究は、キャンパスから排出された 焼却残灰を一五〇度に加温し、そこに、キャンパスから排出された破砕したプラス チック類を混入し、溶融・混練した。次に溶融物を型枠に入れ、冷却した。冷却後 、型枠を外して定型物とした。この度は、遊歩道のタイルを計画したので、三〇〇 ミリ~×三〇〇ミリ×三〇ミリの立方体のタイルを作成した。本来は植木鉢(四〇〇ミリ×一〇〇〇ミリ×五〇〇ミリの)の作成を計画していたが、焼却残灰と廃棄プラスチック類だけでは強度不足であ るため、遊歩道のタイルを作成した。
ゴミ1
ユ不燃ごみと焼却灰のリサイクル法、遊歩道用タイルの作成(提案)

 現在は、加熱により発生する可能性のある有害ガス及び固形物から有害物質の溶 出の可能性能性についての研究を推進中である。
 東広島キャンパスから排出されている固形廃棄物のうち、比較的簡単に比較的低 コストに、焼却或いは埋め立て処分することなく再資源化できる固形廃棄物として 、古紙、廃金属、廃ガラス類がある。これらは、大学の全構成員の同意が得られれ ば、早期に全量リサイクルを実施したい。草刈り後の草木類は全て堆肥化によりリ サイクルができよう。
 問題は、廃試薬瓶、プラスチック類及び焼却残灰の処置であろう。廃試薬瓶につ いては前記したごとく、試薬は無駄なく残らず使用し、廃棄前の洗浄、乾燥する等 の教育がより徹底できれば、試薬瓶を製造業者に返還、再使用する等によるリサイ クルができよう。リサイクルが進展すれば、焼却残灰は減少するであろう。減少し た焼却残灰とプラスチック類を利用して前記提案事項に添った物を作成、利用すれ ば、固形廃棄物のゼロエミッション化は可能と考える。
 本報は、平成八年度教育研究学内特別研究費、「広島大学東広島キャンパスから 排出されている固形廃棄物(ごみ)の管理利用システムの構築」と題する調 査研究を環境保全専門委員会が実施し、その成果の一部を筆者が纏まとめて 連載した。
 本調査研究の推進にあたり、環境保全委員会、環境保全専門委員会及び環境対策 部会の委員、又本部及び各学部事務組織、教職員、学生の全構成員の絶大なる研究 協力をいただいた。調査研究に協力をいただいた方々に感謝とお礼を申し上げる。

ゴミ2

こんな煙を出さないように…











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