東広島キャンパスにおける交通実態調査の報告

文・交通問題対策委員会専門委員会

 交通問題対策委員会専門委員会では、東広島キャンパスの駐車場不足に伴って現在その対策のあり方を検討していますが、その適切な審議には最近の交通実態に関する新しいデータが必要です。そこで、平成八年度教育研究学内特別経費の助成を受け、「東広島キャンパスにおける駐車対策のあり方に関する研究」を行いました。この調査研究は杉恵頼寧専門委員長を研究代表とし、専門委員会以外の方々の協力も得て実施されました。その調査項目は次の三点からなっています。
1.キャンパス内に流入、流出する自動車等の交通量実態調査
2.キャンパス内の駐車場の利用実態調査
3.東広島キャンパスの交通に対するアンケート調査
 東広島キャンパスの交通に対するアンケート調査には構成員の皆様方から多くの協力を得ました。ここに感謝の意を表したいと思います。次に、構成員の皆様方に直接関係のある東広島キャンパス内の駐車場の利用実態調査と同交通に対するアンケート調査結果について主要な点を紹介し、最後に専門委員会の最近の活動について報告します。



キャンパス内の駐車場の利用実態調査

図1  調査対象地域を五地区に分け(図−1)、自動車、バイク、自転車の駐車台数、自動車の駐車の実態(駐車証の有無、駐車場所)を平成八年十二月四日(月)の午後の駐車ピーク時に調査しました(表−1)。
 調査時点の駐車容量は三二四五台ですが、これに対して四一五一台駐車しており、九〇六台分の駐車場が不足しています。駐車場には三七六九台駐車しており、この内三二六台は図書館北側空地(一二七台)と大学会館東側空地(一九九台)に駐車しています。したがって、その差三四四三台が指定された駐車場に駐車していたことになります。この数値は駐車容量より一九八台多くなっていますが、これは指定された駐車台数以上に無理やり押し込んだ状態になっているためです。
 その結果、駐車場不足九〇六台のうち三二六台は上記の両空地に、一九八台は指定された駐車場の超過分に、残り三八二台が路上駐車となっています。ところが近いうちにこれらの空地も環境緑地として整備されることになっていますので、その時にはさらに駐車場不足は深刻になると予想されます。
 各地区別にみると、東地区・北地区が他の地区と比べ圧倒的に駐車容量を上回る台数の車が駐車しています。その超過割合は、東地区で駐車容量に対して六四%、北地区は同じく三四%です。西地区は同じく四%で、それほど混雑していません。講義棟から遠い場所にある南地区については多少の余裕があり、駐車台数は駐車容量を下回っています。この結果からも、東地区の駐車場不足は明らかであり、このため他の地区と比べて路上駐車が多くなっています。
 駐車証の有無別の台数を見ると、駐車証(入構許可証)の不提示が六七四台もあり、路上駐車に占める割合も駐車場のそれに比べてかなり高くなっています。現在のような駐車場不足を緩和するには、無許可の車を排除することが最も有効な手段の一つであると思われます。


表-1 東広島キャンパス駐車場実態調査結果
地区

駐車容量(A)

駐車場***

路上

計(B)

(A)-(B)

バイクの台数 自転車の台数

駐車証

駐車証

駐車証

駐車証

駐車証

駐車証

北*

1335

(0)

1531

(84)

157

(43)

1688

(127)

61 34 95 1592 191 1783 △448 603 1522
東**

727

(0)

833

(163)

131

(36)

964

(199)

161 68 229 994 199 1193 △466 665 732
西 742 665 91 756 10 7 17 675 98 773 △31 487 2949
南東 178 97 47 144 21 20 41 118 67 185 △7 5 13
南西 263 98 119 217 0 0 0 98 119 217 46 13 31
3245 3224 545 3769 253 129 382 3477 674 4151 △906 1773 5249
注 * 図書館本館北側空き地含みで( )の数字はその内数
** 大学会館東側空き地含みで( )の数字はその内数
*** 本設と暫定駐車場を合わせた台数



東広島キャンパスの交通に対するアンケート

 今後の交通対策のあり方を検討する際の参考材料とするために、同キャンパスへの通勤通学する教職員、学生等を対象にその交通実態、交通対策(入構規制)に対する意向を調査しました。アンケート票は各部局の事務局を通じて、平成八年十一月中旬に配布し、十二月中旬までに回収しました。

(1)回収状況(図−2)
図2  教職員は、福利厚生施設等の外部職員(その他職員)を含めて対象となる一八〇三人の六八%に当たる一二二二人から、学生は対象となる一万四〇二三人の四四%に当たる六二九八人から回答を得ることができました。これを合計すると七六〇二人、四八%の回収率です。
 その内訳けを見ると、学生は各学年の学生および大学院生等(修士、博士課程とその他の学生)からほぼ平等に回答が得られました。教職員は、過半数が教官から、約三分の一が事務官・技官等からの回答です。

(2)居住地分布
 学生は東広島市内からの通学者が最も多く、全体の八四%を占めています。学年別にみると、学部一年生は、他の学年に比べて市内からの通学が若干少なく、広島市からの通学がそれだけ多くなっています(約一〇%)。教職員では学生に比べ市内通勤者の割合が五五%と少なく、教官では約四〇%、事務官・技官等の約六〇%が市外からの通勤です。
図3

図4  東広島市内居住者(図−3、4)についてさらに居住地分布を詳細にみると、学生全体では大学構内、御薗宇1、下見、田口1の大学近辺に約三〇%、ブールバール沿線(西条駅前と西条中央)まで含めると、四五%余りが大学周辺に居住しています。その他の区域では寺家、西条西部、原などの居住者が多くなっています。
 大学構内・大学近辺・ブールバール沿線の居住者の割合は、学部一年が最も高くて六〇%近くを占め、学年が上がるにつれ、遠方の居住者の割合が高くなる傾向にあります。これは、自動車が利用できない人は、学生宿舎を含めて利便性の優れた下見、西条中央に居住し、自動車を利用できる人は家賃の比較的安い下宿を求めて、次第に郊外の方に移動して行くものと考えられます。
 教職員では、教職員宿舎があるため大学構内の居住者の割合が高くなっているほか、学生とは対照的に大学近辺の居住者が少なく、八本松南、三永、高屋など大学から離れた地域からの通勤者の割合が高くなっています。

(3)学生の車の保有状況(図−5)
図5  自家用車の所有状況は、学部一年生が他の学年に比べて極端に低く、その他の学部生が約四〇〜六〇%、大学院生他で約七〇%です。一方、バイクの所有状況は、学部一年生でも二二%とかなり高く、学年が上がるにつれて所有率が若干増えていますが、自家用車ほど増えず、三〇%程度となっています。









(4)通学通勤の交通手段(図−6)
図6  通学・通勤に使用する交通手段のうち、キャンパスに到達する方法に着目して集計しました。
 学生全体では、自家用車が約三七%と最も多く、次いで自転車の三〇%となっており、両者で全体の約三分の二を占めています。自家用車が規制されている学部一年生では、約五五%が自転車を使用しており、次いでバイク(原付含む)、バスが続きます。学年が上がるに従い自転車、バイク、バス利用の割合は減少し、学部四年生以上では約半数が自家用車を利用していることがわかります。
 教官、事務官・技官等では自家用車が約半数ですが、次いでバスがそれぞれ全体の約三分の一を占めており、市外通勤者にJR+バスを利用する割合が多いことがうかがえます。

(5)駐車対策に対する意向(図−7) 図7  専門委員会では、次の四つの入構規制について、その可能性を検討しています。
A. 大学と自宅・下宿の間の距離によって規制する(居住地)。
B. 学生の学年によって規制する(学年別)。
C. 免許を取って一年以内は入構を規制する(免許歴)。
D. キャンパス内の駐車場を有料化にする(有料化)。
 A〜Dの規制に対して、学生全体では「居住地」に多くの賛成が集まり、次いで「学年別」、「免許歴」の順です。これを自家用車利用者・非利用者に分けてみると、車利用者では「学年別」や「免許歴」に賛成が集まり、非利用者では逆にこれらの割合が少なくなっています。これは、大学近辺の車利用者が「居住地」に反対し、現在規制を受けている学部一年生が規制期間の延長につながる「学年別」等に反対した、などの要因が考えられます。なお、「有料化」については、通学手段を問わず賛成が約一〇%程度で、学生からの支持はあまり得られていません。
 一方、教職員でも「居住地」に最も賛成が集まっていますが、「有料化」については、自家用車利用者、非利用者を問わず、四〇%以上の賛成があり、学生とは大きく異なった傾向を示しています。これは、多少お金を払っても常に自分の希望する駐車場に車を停めたいという願望の現れだと思われます。
 なお、この設問については全体の約一割が無回答で、その中には「全てに反対」や「回答拒否」と明示されたものも少なくはありませんでした。

(6)自由意見  自由意見欄の記入者は、回収数七六〇二票に対して三一〇〇人(記入率約四〇%)で、多くの方からさまざまなご意見をいただきました。そこに記入された意見を大きく取りまとめると、以下のようになります。

 これらのご意見は今後の専門委員会での審議の参考にさせていただきたいと思っています。



最近の専門委員会の活動について

 専門委員会は、立体駐車場を含めて駐車場の大幅な増設が、駐車場不足を解決する最善の方法と考え、これまで努力してまいりましたが、その早期実現はなかなか期待できそうもありません。そこで、昨年度は駐車場の有料化の可能性について集中的に検討しましたが、法制度上の問題点が十分解決せず、引き続いて検討することにしています。
 しかし、このような駐車場不足では、駐車場が大幅に増設されるまで入構規制を強化せざるを得ず、まず構内入口の五か所にゲートを設置して、駐車を許可されていない(駐車証を保有していない)車を排除することにしました。これによって大幅に駐車場不足は改善されると思いますが、それでも不足するようであれば、今回の調査を参考にして新たな入構規制を検討したいと思っています。このゲートについては、事務当局で、現在そのための予算の獲得に努力されている所です。その他に構内の交通安全の総点検を行い、危険な箇所の改善を事務局に申し入れました。それによってすでにいくつか改善がなされております。
 今年度は、ゲートの実現に向けて努力するとともに、構内の交通安全をさらに推し進めたいと思っています。また、今年に入って学生の交通事故が増えていることに鑑み、駐車証交付時に義務づけている交通安全講習会をより効果のあるものにする方法を検討することにしています。

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