英国リーズ・メトロポリタン大学との
共同研究終了にあたって
 

文・写真 前川 功一(Maekawa, Koichi)
経済学部長

 

協定締結のいきさつ

 海外の大学との交流協定締結は縁談と似ている。家柄や格式にこだわりすぎるとまとまらない。プライドが高すぎたり、高望みしすぎると縁遠くなる。魅力がないと振られる。また良き仲人も必要である。
 一九九一年に、仲人役の京都ブリティシュ・カウンシルのロデリック・プライド館長(当時)に、リーズ・メトロポリタン大学(以下LMUと略記する)の前身のリーズ・ポリテクニック・ビジネススクール長であったレックス・クラーク氏を紹介されたとき、私はその学校名さえ知らなかったし、将来大学間協定を結ぶことになろうとは全く予想もしていなかった。
 ところがその後、ポリテクニックから大学に昇格が決定したころから、クラーク氏は広島大学と大学間協定を結びたいと非常な熱意で迫ってきた。そして九二年、クラーク氏の誘いに応じてLMUを視察に行くことになった。
 行ってみるとVIPの視察日程のように分刻みのスケジュールが組まれていて、LMUのあらゆる階層の人々に会わされた。
 視察の結果、LMUは地元産・官・学と連携した地域経済研究、高度専門職業人の養成、社会人のための昼夜開講などに力を入れていることが分かった。夜間学部を持つ経済学部と共通点が多いし、社会に開かれた大学を目指す広島大学の参考にもなると思い、大学間協定に向けて努力を開始した。
 その結果、九三年十月三日に大学間協定が東千田キャンパスの旧広大本部学長室で締結され、翌年には原田学長がLMUを表敬訪問された。また九五年には、LMUのワグナー学長夫妻が来学されフェニックス・フェスタに参列された。


熱意と協力者があってこそ

 一九九四年度から九六年度までの三年間に科学研究費(国際学術)の補助を受けて、広大とLMUの間で共同研究「日・英の経済・経営パフォーマンスの比較研究」を実施した。その結果は、本年三月付けの経済学部研究双書(英文論文集、一部日本語を含む)"Economic and Managerial Performance in Japan and Britain"として出版された。
 この共同研究には、経済学部、法学部、国際協力研究科、医学部及び数校の他大学から多数の教官が参画した。またこれとは別に、教育学部、学校教育学部からも二、三の教官がLMUを訪問し、さらに教育学部の英語教育学の学生が毎年英語研修に十人前後派遣されているれている。最新のデータに基づき、これらの人的交流(広島大学関係分のみ)を別表にまとめておく。


別表 リーズ・メトロポリタン大学との交流実績(協定締結後のみ)

派遣人数

受け入れ人数

備考

1993年度

1

4

1994年度

10

1

原田学長LMU訪問

1995年度

5

2

ワグナー学長来訪

1996年度

7

4

1997年度

1

合計

23

11



 この大学間協定締結を推進した者の一人として、このように交流が活発に行われ、責任を果たせたことに安堵している。またご協力いただいた原田学長、ワグナー学長はじめ多くの方々に深く感謝している。
 この経験から、国際交流にとって大切なことは、両大学の交流に対する熱意と多くの協力者を得ることであることを強調したい。「広島大学たるもの、協定校選びは慎重に行わなければならない」と構えるよりも、実質的な成果が得られそうなら、相手の熱意を受けて立つのもまた良いのではなかろうか。
 さて今後についてであるが、国際学術研究費が終了したので、これからは交流経費の捻出に苦労することが目に見えている。金の切れ目が縁の切れ目にならぬよう、今後も交流の努力を続けたいと思っている。


写真
1994年10月,原田学長がリーズ・メトロポリタン大学長のレスリー・ワグナー氏を表敬訪問しプレゼントを渡しているところ(ワグナー学長室において)


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