なかよしキャンプに託した夢 



やらなきゃわからない、やってよかった
文・ 石田 和歌子(Ishida, Wakako) 学校教育学部

 「なかよしキャンプ」が終了して、四か月が経とうとしています。このキャンプを思い立った三月のころには、わたしたち二人の頭の中だけの計画だったこのキャンプ。それがあんなに大きな企画となったことをとても嬉しく思います。
 このキャンプの実現に関わったのは広大生を含むボランティアが四十五人、それに計画の実現を支えて下さった東広島市社会福祉協議会の方々をはじめ、保護者の方まで数えると一体全部で何人になるのか分かりません。本当に多くの方々が手をかけて下さったおかげで、いろんな人のいろんな思いの詰まったキャンプになったと思います。
 キャンプを終えて、「これはやらなければよかった」と思うようなことは一つもありません。このことが一番良かったと思います。準備の最中は「失敗したら嫌だし、準備めんどくさいし、やりたくないな」といつもいつも思っていました。失敗したくないという思いが強かっただけに準備に力を入れることができ、思った以上の結果を出すことができました。
 子どもの反応にも意外なものがありました。やっぱりやってよかったな、やらなきゃわかんないなと、つくづく思いました。このキャンプには目標とか伝えたいこととかいっぱいありました。それだけに考えなければいけないことも多くて大変でした。わたしたちは企画自体にさまざまなメッセージを詰め込みました。気持ちを込めた分だけ伝わり、伝わった分だけきちんと返ってくるんだなあと思いました。
 本当に貴重な体験ができたと思っています。参加して下さった皆さん、どうもありがとうございました。

写真 ノーマリゼーションの実現を目指したなかよしキャンプ(5月31日から6月1日、東広島市総合福祉センターにて)







手探りで探る「共に生きる社会」

文・ 橋本 知笑(Hashimoto, Chiemi) 学校教育学部

   学校でも家でもない新たな場で、先生でも親でもない立場の人や初めて知りあう友だちと一緒に衣食住を共にする。このような日常とは異なる環境の中で、自分と向き合い、徐々に自分というものを出していく。これは大人の私たちにとってもかなり難しい問題だと思う。「統合キャンプ」の場は実社会のミニチュア版のようなもので、障害理解問題だけではなく本当にさまざまな問題が含まれていて、なかなか根気のいるものだと感じた。
 このなかよしキャンプでは、目標を「グループの中で自分の居場所を見つけ、そのグループが居心地のいいものと感じられるようにする」「子ども一人ひとりが、グループの中で自分自身の欲求や要求を満たすための方法を自分で見つけることができる」と設定していた。
 一回目の顔合せ会のときには自分を出しきれず鎧を被っていたような子も、三回目ぐらいになるとかなりリラックスした本来の姿を見せるようになってきた。
 障害のあるなしにかかわらず、さまざまな感情の表し方や表現の仕方のできるいろんなタイプの子ども同士が、主体的に時間を過ごす。その中では、時には大きな壁にぶつかることもある。時間が経つにつれて疑問や欲求も生まれてくる。今までに体験したことがないために生じる問題について、わたしたちボランティアはどのように対応していけばよいのか。そのような場に出くわしたとき、ケースバイケースでのサポートが必要になってくる。子ども同士で解決できるものなのか。どこまで手助けすべきなのか。障害についての疑問にはどのように応えていくべきなのか。とても難しいところだった。
 このような統合キャンプは、目標に掲げたような、誰もが抱えている課題を引き出しやすい場であるように思える。子どもたちは学校や家庭とは違う場に戸惑いながらも、自分の居場所というものや、いろんな人とのつき合い方というものを徐々に探していけたのではないでしょうか。この小集団の中で子どもたちはそれぞれにいろんな経験をした。大人になっていく過程の中で、このキャンプのことをきっかけに「共に生きる社会」とはどのようなものか少しでも考えてくれるようになってくれたらうれしいなと思う。
 長い間私たちと共に頑張ってくださったボランティアのみなさん、本当にお疲れさまでした。

 

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