平成九年十月一日理学部に寄附講座が設置された。講座の名前は、「再生生物学(協和発酵)」。
聞き慣れない名称であろうと思われるので簡単に概要をご案内しよう。
英米では、寄附金を基金として運営される講座は古くからあるが、日本では一九五〇年代から一部の私学で導入されてきたものの、国公立大学では学問・研究の自由が脅かされることへの危惧から、最近まで実現しなかった。
八七年(昭六十二年)、臨教審第二次答申を受けて、社会との連携の充実並びに民間資金の円滑・適切な導入を目的とする、寄附金による時限付きの講座・研究部門の特設が国立大学及び大学共同利用機関に認められた。学部・学科等に置かれるものを寄附講座、附置研究所等に置かれるものを寄附研究部門と呼ぶ。
東京大学先端科学研究センターで導入されて以来、理系を中心に急増し、今年一月現在、全国では二十五大学に四十七寄附講座と十一寄附研究部門が設置されている。
教育研究上不可欠な講座・部門は当然国費により予算措置が講じられているが、これらの存在を前提として、民間等からの寄附を活用して講座等を運営し、さらなる教育研究の豊富化、活発化を図ることが条件である。
理学部の場合は、既設の講座で発生生物学・分子生物学・細胞生物学・組織工学・生体高分子学・合成高分子学等の研究・教育活動が行われているが、これらの領域をまたがる講座として「再生生物学(協和発酵)」が置かれた。
民間等からの寄附金に基づく委任経理金から支出し、寄附講座の開設・運営に必要な経費、すなわち人件費、旅費、備品費、消耗品費、図書購入費、光熱水費等に使われる。経理は大学の判断により一般の行政経費に比して機動的な支出ができる。
寄附講座の名称には、大学で寄附者が明らかとなるような字句を付することができ、今までに設置された大半の寄附講座は寄附者の会社名を括弧書きで付している。なお、寄附者が複数で一つの寄附講座を受け持つことも可能である。理学部の場合は、協和発酵工業株式会社が寄附者である。
一定期間継続的に教育研究を行うための制度であるので、原則として二年以上五年以下であるが、延長も可能である。理学部の場合は三年間である。
教授又は助教授相当者一人と助教授又は助手相当者の一人の合計二人以上の教員をもって構成し、大学の判断で選考を行い、研究はもとより学部学生、大学院生を教育する。身分は一般職の非常勤職員であるが、常勤的な形態が原則である。また、教授・助教授相当者に対しては大学の判断で「客員教授」、「客員助教授」を称させることができる。理学部の場合は、客員助教授と助手相当者により運営される。
寄附者に特許等を受ける権利を譲与することを約することはできないが、寄附講座等の客員教授等が発明を行った場合は、常勤の教官の発明と同様に取り扱うこととなる。
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以上が寄附講座の概要であるが、寄附講座を運営するには一年間約二千万円は必要となり、最短期間の二年間運営するとなると四千万円となる。
このほかに本学と産業界との研究協力には次のような形態がある(件数、金額は平成八年度)。民間等との共同研究(二十六件、約八五〇〇万円)、受託研究(六十五件、二億五五〇〇万円)、奨学寄附金(約一六〇〇件、十一億一一五〇万円)、受託研究員の受け入れ(十八人、八八〇万円)となっている。
今後、産業界とのさまざまな形態の研究協力がより一層発展し、今年度設置を見た寄附講座のますますの増加を願うものである。
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なお、本年四月に発足した事務局総務部研究協力課では、既述の産業界との研究協力のお世話のほかに、文部省科学研究費補助金(平成九年度採択件数六二六件、十六億二一七〇万円、全国約八四〇研究機関のうち第十位)、各省庁の新基礎研究制度(政府出資金事業)による補助金(平成八年度、七件、約五億円)についてもお世話をしております。近いうちにホームページによりご案内が可能となりますのでご利用ください。
(総務部研究協力課)
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