モスクワ大学は,正式にはMGU(エム・ゲー・ウー)と呼ばれ,M.V.ロモノーソフ記念モスクワ国立大学の略称である。18世紀の科学者ロモノーソフの建言によって1755年に創設されたもので,ロシア最大かつ最難関の総合大学である。幾多の優秀な人材を輩出している。創設当時の旧校舎はクレムリン北側に残っているが,新校舎が雀が丘(旧レーニン丘)の上にある広いキャンパスに1949年から70年にかけて建設され,現在ここに14学部とアジア・アフリカ諸国研究所をはじめとする各種の研究所がある。 私は1990年8月,国際ロシア語・文学教師協会(略称マプリャール)第7回国際大会に出席した際と,96年8月ロシア科学アカデミー・ロシア史研究所の招待で1か月モスクワに滞在した際の2度,このモスクワ大学を訪れた。 モスクワ大学のシンボルは何と言っても30階建ての本館で,その上には尖塔がそびえたっている。この本館には学長室,教官の研究室,教室,図書館,博物館のほかに,地方出身者や海外からの留学生のための寮,食堂(4つ),ビュッフェ(若干),売店,郵便局,理髪店,美容院,文化宮殿(音楽会,演劇,映画などを行うためのホール)などがある。 ソ連時代は授業料が無料のうえ奨学金までもらえるとあって,モスクワ大学の学生は非常に恵まれた教育環境にあったが,物価が高騰し,微々たる奨学金しかもらえない現在の学生たちおよび少額の研究費・給与しかもらえない教官,研究員には,受難の時代が続きそうである。 |