学長インタビューNo.23
平成10年度概算要求はどこまで認められたか?
日時:平成9年10月13日(月)午後4時
場所:学長室
平成十年度の概算要求は各省から大蔵省へ要求する段階に至っている。本学の要求項目のどれが大蔵省へ行っているか気になるところである。
三連休明けの十月十三日(月)の夕方、委員長と新たに選出された井上副委員長(次期委員長)とが学長を訪ね、新副委員長を紹介した後、概算要求に関わるお話をうかがった。
広報委員=来年度の本学の概算要求はかなりの項目が文部省から大蔵省への要求項目に入れられたそうですが?
学長=一二〇%の達成度と言っても良いくらい、大蔵省への要求項目に挙がった。特に先端物質科学研究科の新設が一部重点化を伴って認められたことは嬉しいことだ。これをきっかけに大学院を順次整備し、時間はかかるかも知れないが重点化して、各学部が重点化した大学院と関連するようにしたい。これによって日本を代表する研究大学への手がかりとなれば良いと考えている。
医学研究科に保健学専攻博士課程も計上された。看護学の他に、作業療法学と理学療法学の分野がこの専攻にあることから、日本では数少ない分野の博士課程となった。これに併せて、霞再開発の基本設計ができつつあり、二年後に鍬入れの見通しとなったことは、私の夢がまた一つ実現することとなり嬉しい。
今までは分野が分離、独立する形で学部や大学が大きくなってきたが、看護学校を医学部の学科にしたように、“融合”する形で充実、拡大を図る方向を考えたら良いと思う。今日多数の募集定員減を言われている教員養成系大学、学部にある芸術系分野を国立の総合大学に取り込むことも、この方向で私が考えている一つの提案である。
ちなみに本年度においても、事務一元化も、文部省の考えを先取りする形での要求だから認められた。
青雲寮が大きなトラブルなしに廃止され、整地することができたが、これもいずれはキャンパス整備の“原資”となり得る。
このように着々とハード面でのキャンパス整備は日本一になりつつある。この上は先生方に努力していただいて、良い研究を行っていただくと同時に、先生方が心を一つにして“良い学生”を育てていただきたい。
研究は個人やグループでできるが、良い学生を送り出すのは大学全体で行わなければできない。広大を日本を代表する大学にして二十一世紀に引き渡すために、この四年間を努力してゆきたい。他大学が自律を失いかけている今、各学部が特色を出して整備充実を図る機会だと思う。
広報委員=今回の概算要求では歯学部からの事項は全く認め
られていませんが…。
学長=歯学部の方々には気の毒であったが、パイが小さくなって、大学からの要求が多ければ、社会を騒がせているというだけで、順位は後に下げられる。今回は要求が通りそうもないので本学から出さなかった。いくら学外で騒いでも学部が一丸となっていれば、何とかなったかもしれない。全国国立大学歯学部のあり方、ひいては学生募集定員を削減することが考えられている。もしこれが実現し募集定員が五十名を切る状況となると、学部としての存在もうんぬんされるので苦慮している。
広報委員=本学の要求項目を本省のそれに入れるのに、学長、事務局は大変努力されたそうですが…。
学長=事務局長は週に二、三回東京に行くこともあったし、私も忙しい時には週に一回は事情説明に行った。私の場合は病院長、学部長を各二期、学長を一期すでに務めているので、文部省に知り合いが多く比較的話がスムースにできたが、それでも重点化については、担当者になかなか会うことができず東京滞在を延ばしたこともあった。いろいろな所で人を知り、その人々にいやな思いをさせたことが今役だっていると思う。
この後、話がはずみ、学長の祖先が毛利元就に攻め落とされた旗返城主であったことなど、うかがっているうちに窓の外は薄暗くなり、予定の時間を三十分以上超えて学長室を辞した。
岡本委員長(右)と井上副委員長
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