コラム

中国の大学事情あれこれ(1)
重慶市の直轄市化と大学への影響



 去る十月七日から十四日まで、中国の重慶・上海両都市を訪問する機会に恵まれた。この度の訪華は、所属する大学教育研究センター主宰の科研課題に関わる調査遂行がその目的で、最近の中国高等教育方面における改革状況を見聞することに主眼があった。結局、重慶で三大学、上海では上海市高等教育研究所と、併せて四機関に対して訪問調査を行い、両市の共通性や各機関の独自性について聴取することができたのだが、本欄ではそのなかからトピック的なものを紹介し、諸氏の参考に供したいと思う。今回の焦点は重慶である。
 さて、従来から四川省のなかでも別格として扱われてきた中国西南地区の最大都市・重慶市は、本年三月十四日の全国人民代表大会第五次会議での決議により、北京・上海・天津と並ぶ第四番目の直轄市となった。これにより同市の人口は約二倍の三千余万、面積では約四倍の八万二千平方キロメートルとなり、かつ現在建設中の三峡ダムの上流域をほぼ含むに至っている。同市には、内外からこれまで以上の経済的発展が期待されており、実際、数年前から続いている市内の開発は、ここに来て加速度的に進展しつつある。とくに周辺地区との交通網の整備(高速道路等)やビル群建設は、その可否は別として、抗日戦争前後からの老朽建築の取り壊しや交通渋滞の悪化による市民の不便のなかで実施されている。
 そして、その影響は、実は高等教育機関にも及んでいる。例えば、重慶市には重慶大学等の国立大学が存在するが、それ以外の省・市立大学に若干の異変が生じているのである。
 まず省立大学は従来四川省の管轄下にあり、教職員の給与・補助金などは省政府の予算で賄われていたが、同市の直轄市化を機に当該機関への省からの支給が途絶されることになった。困った大学側は重慶市・四川省両者に何度もかけあい、ようやく解決にこぎ着けたのだが、数ヶ月間は給与無支給が続いたという。また「四川」を冠する大学には改称が求められているとの事実もある。四川外語学院・四川美術学院がそれである。ただ、すでに知名度を得た名称の変更には大学側が強く否を唱えており、調整中とのことであった。
 一方、重慶市には唯一の市立大学として渝州大学があるが、これまで市の管轄ということで同市の発展と共に歩んできた同大学も、直轄市化の影響を蒙っている。要するに、従来未認可であった同大学は、直轄市の機関として国家審査を得ねばな らないという。本十一月には、北京から国家教育委員会の代表団が来訪するため、準備の真っ最中であった。
 この他、同市人民政府の教育行政部門(教育委員会)でも、上記渝州大学が存在したとは言え、高等教育専門の担当組織が未整備であったことから、現在「室」を設置して目下関連業務に着手したばかりとのこと。経済的発展の影で、重慶市の教育部門はまさに過渡期にあると言ってよい。
(広島大学調査室 橋本 学)


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