日本式資本主義にも、失業率を低く抑え会社に忠実な労働者を生み出したメリットはあったにしても、今後は念頭に置くべきデメリットがあります。乗っ取りの脅威にも直面せず、株主から業績向上を求める圧力も加わらない会社では、社内の昇進が、派閥や年功序列ではなく確実に実力によって行われるよう、特に注意を払う必要があります。やる気のある人物が日本の大企業の中で欲求不満に陥っているという例が目に留まります。
また日本では、終身雇用制のため、会社によっては、社員の個人的な希望を軽視し、社員の家庭生活を考えずに「単身赴任」を命じてもよいと思っているようです。充実した幸福な人生は会社にコミットするだけでは得られません。多くの人々にとっては、自分の家庭や自分が暮らしている社会の方が、もっと重要であるはずです。
要するに、日本の年金制度を適切なものにするためには、日本の配当金政策を改める必要があると思います。また、企業側が支配権を握っている日本の企業統治の制度を刷新し、株主の権益を会社がもっと重視するようにするとともに、会社の政策や行動の中で、環境や倫理の問題に適切な注意を向けるようにすべきです。
長年にわたって過剰に規制され保護されてきたというのが、第三者の目に映った日本経済の姿です。しかし近年、このことが、過剰な規制や保護の対象となってきた部門の国際的な競争力を弱めてしまいました。口先では規制緩和の原則を支持しながら、怪しげな理由を振りかざし、例外措置を求めて強い圧力を掛ける傾向が見られます。「総論賛成、各論反対」すなわちNIMTO(Not in backyard=わが家の裏庭では駄目)が昨今の風潮のようです。
このほか日本では、「事なかれ主義」すなわちNIMID(not in my term of office=わたしの在任中はお断り)の傾向が管理職の間に見られます。日本の国会に多数の「族議員」がいることは規制緩和を骨抜きにする真の危険性をはらんでいます。そのような事態に至った場合、日本の消費者は苦しむことになりますし、海外の貿易相手との摩擦が増幅される危険も避けられないでしょう。パートナーたちは、規制緩和和こそ日本の市場を自由競争に開放するための唯一の道だと考えているからです。