留学生の眼(62)

  光陰矢のごとし  
Time flies like an arrow.

文 写真・ ピリス・ジョセフ・ジュード

 
 日本に来てもう五年になりました。月日が経つのは早いもので、後にいろいろな思い出だけを残して行きます。日本にいる間にこの国のことを少しでも理解できるようになったことは、すばらしいことではないでしょうか。

 一年中暑い単純な季節のスリランカから、大自然の移り変わりによる四つの季節に囲まれる日本が天国のように感じられるのは当然のことと思えます。日本は地震の多い国と聞いていた私に、天高くそびえるビルディングは、日本人の進歩した技術のすばらしさを教えてくれました。
 春の桜、秋の紅葉、夏の海、冬の雪などの季節の変化に調和して生きる日本人のイメージを持っていた私ですが、考えてみると、自然の変化に対して自分の生活パターンを変えて行かなければならないということは、「自然との闘い」という気持ちが生まれてくるのも当然ではないでしょうか。しかしながら、自然と人間との闘いは、いつの場合にも自然の勝利に終わるのは、阪神大震災のことをみてもよく判ると思います。
 盆栽や折り紙などの伝統的な技術が精密機械の製造に役立ったと思います。日本人は手先が器用で、細かい作業が上手だからです。一方、日本には鉄や銅などの鉱物資源はほとんどなく、これらは外国から輸入していると聞いていますが、街のあちこちに山のようにあふれている自転車やテレビを見ますと、この国の人々の考え方の間違いを感じました。物資の流通の激しい国にいる日本人たちが、これらはゴミであると考えることを私はどうしても理解できません。
 物質的には非常に恵まれている日本人たちの中に、精神的な不満を訴える人が大勢います。国の近代化と人間の幸せとは必ずしも一致しない、ということでしょうか。
セイロン観光局パンフレットより転載



プロフィール

愛する家族,妻と長女(7才),長男(0才)

◇一九九二年十月七日 来日
◇一九九三年四月八日 広島大学大学院理学研究科博士課程前期入学
◇一九九五年四月八日 広島大学大学院理学研究科博士課程後期進学



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