愛と看護の心

 本田 小夜子(ほんだ さよこ) 医学部附属病院

〈部局歴〉
  昭和35・4 医学部附属病院
 


 平成十年三月三十一日をもって広島大学医学部附属病院を退職するに当たり、感無量のものがあります。
 昭和三十五年に当院に就職しました。小児科・皮膚泌尿器科の混合病棟を皮切りに、二内科・耳鼻科・精神神経科を経て、現在、麻酔科蘇生科・原医研内科病棟に勤務しております。
 勤務年数は三十八年になります。看護一筋に進んだ今日までを振り返って見ましても、看護は決して楽しいことばかりではありません。むしろつらいことが多かったように思います。
 患者さんの心を汲み取り、苦痛を共有し、話を十分に聞き、共に一日も早い回復を祈って、患者中心の看護を行ってきました。常に看護の原点にもどり、「看護の心」をもって看護を実践するならば、患者さんも満足し、自分自身も自分が望んでいた看 護ができたことへの満足感がありました。そして互いの信頼の中から、看護を受ける者と看護を行う者との間に、何にもかえがたい「愛」が自ずと生まれていました。
 多くの患者さんと接し、その人の生や死に心を痛めたことは数知れません。私が選んだ道に誤りはなかったと信じています。  そして看護の仕事に携わって以来、多くの方々に出会えたことです。大学病院の全職員の方は言うに及ばず、看護協会や研修会などを通して、他病院との交流もありました。本当に多くの人々に支えられ、励まされて今日まで無事勤めさせていただきま したことを心より感謝しています。私の一生の宝物として大切に育み、私を魅きつけてやまない看護に生かします。
 ともすれば、医療の機械化に伴って、看護までもが機械的になっていく傾向にあることが否定できない今日、今一度、看護の原点である「看護の心」「人間愛」をきっちり伝えていくことが私の使命だと思っています。
 看護の心をささえ愛「合い」ましょう。(看護のあゆみより)






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