妄言夛謝

 今村 詮(いまむら あきら) 理学部高分子化学講座  

〈部局歴〉
   昭和37・4 (電気通信研究所)
    39・5 (厚生省)
    50・4 (滋賀医科大学)
    57・10 理学部
   
 


 昭和五十七年十月、大津市より、さあこれから広島大学で思う存分研究をしようと意気込んで、中国自動車道を車で飛ばし、岡山県の津山の近くで生涯ただ一度の速度違反で呼び止められてがっくりしたのが、つい昨日のように思われます。それからはや十五年たち、停年の日を迎えることになりました。
 意気込んだ割には、さしたる研究成果をあげることもできなかったこと、まことに忸怩たるものがあります。この原因は勿論、私の能力不足・努力不足が九〇%を占めると思いますが、一〇%くらいは大学の組織面の不合理さにもよると思います。そこで、私なりに、無責任にいくつかの提案をします。
 まず会議が多すぎます。米国の大学の教官は、日本ほど会議の時間をとられず、しかも大学の運営はスムースに行われています。教授になっても常に研究の第一線で活躍できる場を作るべきだと思います。
 次に、大学事務の簡素化は、ぜひ取り組んで頂きたいと思います。定員削減が進んでいるのに対応して、事務の簡素化が進んできたとは思えません。
 最後に、将来の日本の科学研究を背負うのは、若い研究者の卵の大学院生です。彼等への経済面でのサポートとして、大学院博士課程後期学生全員の研究料を免除するように、強力に文部省・大蔵省に要求すべきではないかと思います。
 それともう一つ、博士課程後期に進学を希望する学生には、前期には基礎学力を幅広い分野から吸収することに専念してもらい、前期の間は研究をしなくてもよいようにするべきだと思うのですが。
 まだいろいろ書きたいことが多くありますが、すでに字数がオーバーしました。この文を終わるに当たり、私に研究の場を与えて頂いた広島大学に厚く感謝するとともに、ますますの発展を祈念いたします。そして、妄言夛謝。

ドイツ ウルムの大聖堂とドナウ河を背景に



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