霞キャンパスだより
医学部附属病院における精神科作業療法
文 写真・堀口 淳(Horiguchi, Jun)
医学部神経精神医学講座助教授
精神科作業療法には、農耕や牧畜、木工、手芸などのような生産的作業種目を行う狭義の作業療法と、その他にレクリエーション療法や生活療法を含めた広義の作業療法とがある。
精神医療における治療法の中の精神療法は、主として言語を媒介とする治療法であるが、作業療法は主としてさまざまな作業による非言語的な活動を媒介として行う治療法である。つまり作業療法は、作業の場を提供し、患者と治療者あるいは患者同士
の対人関係を通じて、患者個々の能力の回復を目的に実施する力動的な行動療法である。
医学部附属病院精神科神経科では、平成八年十二月から入院患者を対象に、入院治療プログラムの中に精神科作業療法を試行的に取り入れた。
実施施設は病棟デイルームと専用の農園とし、当初スタッフは専従医師と看護婦及び作業療法士でスタートした。毎週水曜日の午後、主に農耕や手工芸を実施しており、スタッフは実施前後にプレ・アフターミーティングを行っている。現在は試行期間
として入院治療の一つに位置付けているが、保険診療の適応に向けて準備中である。
従来から精神科作業療法の対象者は、慢性分裂病患者が中心であるが、本院で行っている作業療法は、対象者の疾患の種類に拘泥せず、また急性期の患者が対象であるところが斬新である。
また、全国の大学附属病院で精神科作業療法を実施しているところは少ないのが現状であるが、本院の作業療法は医学生や医系(看護・作業療法など)学生の教育や卒後研修にも役立っている。
専用農園での作業風景
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