コアのボランティアとしてそしてボランティアのコアとして  
−神戸と広島の橋渡し−
文・写真 貴志 倫子(Kishi, Noriko)   
教育学研究科教科教育学専攻博士課程前期2年
電子メール: kishi@educ.hiroshima-u.ac.jp/        
ホームページ:http://www.educ.hiroshima-u.ac.jp/~kishi/

 
 震災後、仮設住宅で今なお暮らすお年寄りに広島旅行をプレゼントしたい。
 そんなKOOR(コア)実行委員会の企画紹介を新聞で見たとき、「私のやりたかったことがここにある」とすぐにお年寄りを案内するボランティアとしての参加を決めた。それが実行委員として、いわばボランティアと神戸の方たちの橋渡し役として、企画を実行する側にたって活動することになるとは、正直思ってもみなかった。
 十一月二十二日から二泊三日の広島旅行が終わり、今、KOORのスタッフとして活動したこの半年を振り返り、私なりに感じたことをつづりたい。

 KOORとは「神戸のおじいちゃん、おばあちゃんを旅行につれていってあげたい」という企画の頭文字をとって付けられた名前である。それには、いつもみんなのコアでありたいとの願いも込められている。企画、運営は全て広島を中心とする大学生によって行われている。
 広島への旅行は、神戸の仮設住宅での高齢者の孤独死や閉じこもりの現状を何とかしたい、そして一人暮らしのお年寄りとボランティアとの交流のきっかけになれば、と一年前から企画されていた。

 企画に先立ち、私たちは一、二か月に一回の割合で仮設住宅への訪問を続け、お年寄りとの交流を図ってきた。
 神戸の方たちとのふれあいは、なにより私の糧となった。お年寄りたちに何かしてあげたい。そんな気持ちで神戸の仮設住宅へ向かったが、多くのことをして頂いたのは私たちの方だった。
 この仮設住宅への訪問を通して、私なりにできることがあることを確信できたし、スタッフとしてぜひこの企画を成功させたいという気持ちが強まった。広島への旅行中は、荷物運びや観光地へ先回りしての準備など影の仕事をやってきたが、それが苦にならなかったのはこの体験があったからである。たのはこの体験があったからである。

 この旅行の実現には、本当に多くの方々の協力を得た。私たちは、慣れない企業回りやマスコミへの広報、街頭募金、ビラ配りを通してこの活動の主旨を多くの方に理解していただけるよう活動を行ってきた。その活動の一環として十一月八日には広島市内でチャリティコンサートを開くことができ、二五〇名もの方に来て頂いた。
 多くのメンバーにとってそうであったように、KOORでの活動は、私が今まで経験したことがないことの連続であった。だから、「KOORでの活動を通して学んだことは」と問われれば、それは「私がKOORに係わっていた時間の中で起こったすべてのできごと」というのが答えである。
 他のメンバーの精力的な広報活動、資金収集活動にただただ圧倒されながらも、自分のできることを精一杯やった。そしてボランティア活動をするには、時間と気持ちと資金が必要であり、そのどれを欠いても計画は実現し得ないことを身をもって体験できた。

 一つ残念だったのは、広島大学では実行委員として活動していたのが私だけだったために、十分な広報ができなかったこと。それでも旅行当日のボランティアとして、広島大学から多くの方が参加してくださいました。
 影ながら多大なご協力をいただいた先生方には本当に感謝しています。これからの私の仕事はKOORでの体験を多くの人に伝えること。今回の旅行はあくまでも第一歩。KOORの活動は今始まったばかりである。

お年寄りは仮設住宅で折った折鶴を平和公園の「貞子の像」に奉納した

グリーンフェスタ会場で昼食(協力者提供のお好み焼き)



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