広島大学最後の八年間は…

 前田 文之(まえだ ふみゆき) 理学部関数論講座 

〈部局歴〉
  昭和37・7 理学部
   
 


 広島大学には結局三十五年と九か月という長い間お世話になった。最後の八年間は、統合移転に伴う諸々のことと、大学改革論議と、図書館長職とで本来の仕事である教育・研究、特に研究にはほとんど手が回らない状態で過ぎてしまった。
 自己点検評価の作業のため、その報告書に盛り込む業績を作る時間がとれない、と言ってきたが、それと似たような状態のままで停年を迎えることになった。
 もっとも、研究の時間があって論文を書けたとしても、もはや大した論文は書けないだろう(注:数学の分野では、五十歳を過ぎてインパクトのある論文を書けるケースは稀である)から、論文公害の緩和に一役買って世のためになったと言えるかもしれない。
 ともあれ、図書館長という柄にもない役を与えられたおかげで、その辺のことをあまり悩む必要がなくなり、その点皆さんには感謝しなければならない。
 大学改革に関しては、現在大学院重点化の話が進行中であるが、理学部ではすでに二十四年前に「理学院」構想を出しており、重点化が実現すれば、四半世紀来の念願がかなうということもできる。
 問題はその中味で、昨今の全国的な国立大学の“改変”の状況を見ていると、これで本当に良いのだろうかと首をかしげたくなるものが多い。広島大学の場合は、これからが正念場であろう。将来に禍根を残さない形での“改革”が実現することを念願 している。



関数論ゼミのハイキング(筆者前列左から2人目)



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