四半世紀の思い出

 森川 洋(もりかわ ひろし) 文学部地理学・考古学教室 

〈部局歴〉
  昭和37・4 (公立学校)
    39・4 (大分大学)
    47・10 文学部
   
 


 広大に帰ってちょうど四半世紀が過ぎ、来年三月には停年を迎えることになった。大学紛争の余波のくすぶる一九七二年十月に母校に帰ったときには、責任の重さや将来の不安もあって、うっとうしい気持ちだったのを今でもおぼえている。
 その後の二十五年間は全く問題がなかったとはいえないが、比較的穏やかな日々が続き、学内での特別な思い出はない。ただいつも仕事に追いまくられて、忙しい思いをしながら過ごしてきたように思う。
 とはいっても、万事要領が悪く、成果があがったわけではない。恩師や先輩の先生方の域にまで近づこうと努力したが、遠く及ばなかった。研究面では、フィールドワークに専念するよりも室内にいて、世界の第一線で活躍する研究者たちがどんなこと を考えているのかを追跡していくことに興味をおぼえた。文献をみて、学問の発展方向を突き止めようとしたが、多くは十分には理解できずじまいであった。それだけにまだやりたいことも多く残っている。
 最後の一年間の生活はとくに忙しく、いまだに停年を迎えるという実感がわいてこない。三月までに総合地誌研究資料センターの仕事でもある科研報告をまとめ、学位審査を行い、日独地理学者会議の広島巡検が無事に終了し、元気で三月末を迎えるこ とができれば幸いと考えている。
 それにしても、気持ちよい教室のなかで同僚たちにお世話になりながら、嫌いでないことを気ままに行い、今日までこられたことをありがたく思っている。
 老兵は去って行くが、広大のさらなる発展を祈りたい。



わが教室では数年前から年度始めに中田教授が教室員全員の写真を撮り、廊下に張り出して、一同の名前を覚えやすくしている。この写真は今年度のものである。



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