VERITAS SEMPER UNA EST

 関 太郎(せき たろう) 理学部附属宮島自然植物実験所  

〈部局歴〉
     昭和41・4 理学部
   
 


 「真理は常にひとつである」というこのラテン語は、昨年、新装になった県立広島女子大学のユニークな円形の図書館の入口に書かれています。
 私が、昭和四十一年に博士課程を修了して理学部の職員となった頃、脳裏をいつも巡っていたのは、「真理とはひとつなのか」という問題でした。その頃、植物の分類はまだ名人芸の部分が多く、私は何とかして分類学に客観性をもたせたいと思ってい ました。
 ちょうど広島大学に電子計算機(懐かしい言葉ですが)が入ったばかりで、数学科の山本純恭教授のご指導で、コケを対象として客観的な分類に挑戦しました。「分類の仕方はいくつもあり、使用目的によって使い分ければいい」という分析哲学的な思 想に傾倒しました。複数の真理(技術と言いかえてもいい)の中からどれを選ぶか。そこに倫理が必要なのであり、生命の尊厳こそ最高の倫理でしょう。
 広島大学の理念の第一条が「平和を希求する精神」とあるのはまさにそれです。第二条に「新たなる知の創造」とあって、どこにも古臭い「真理の探求」がないことにホッとしました。知の創造は「真理など存在しない」という精神風土から生まれるも のと信じています。
 長い間、まことにありがとうございました。

庄原市の大目黒山で



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