法学部


人にやさしく

法学部長 水上 千之

 卒業、修了、おめでとう。
 昨年(九七年)は、神戸の小学生殺害事件、奈良県の女子中学生殺害事件、東京の連続通り魔事件など衝撃的な事件が起こった。日本の社会はいったいどうなってしまったのだろうと考えさせられる昨今である。
 しかし、一方、われわれの周囲に目を転じれば、そこは健全な日本社会であるように思う。われわれは、これまで、他人に対してやさしさと慈しみをもって生きてきた。やさしすぎても、とかく人に騙されたり、踏みにじられたりするが、皆さんは、自己をしっかり守りながら、他人に対する慈しみの心を忘れずに生きていって欲しい。これからの人生のご健闘を祈ります。

 



忘れ難い「人」との繋がり

法学部四年 穴井 啓典

 四年間の出来事は雑多にわたるが、折々の、私自身の幾許かの成長というかたちで、確かに刻み込まれていることを感じる。
 思うのは、それらを印象深いものとしている「人」の存在である。折々の転機には、それを彩る忘れ難い“誰か”がいた。ぎこちなくお互いを語った入学して初めての友人。法律サークルで知り合った男友だち。彼等の将来を見つめる真摯さには、驚きを禁じ得なかった。ときに単調なものになりがちな生活に潤いを与えてくれた学部ゼミの皆。いつも浅薄な論を吐いていた私だったが、そんな軽さをもあたたかく包容してくれる観があった。
 彼等を通して得た、支えられ、励まされての私だ、という気付きは、人の相互の繋がりの中で生かされていることを改めて自覚させ、私自身の自律への思いをかきたててくれた。将来は法曹にと思う私であるが、その思いはそんな「人の繋がり」の重さを実感したところから始まったように思う。
 思い出の数々が、暖色を帯びているように感じられるのは、ひとえに多くの方から“気持ち”を頂いたからに他ならない。四月から、大学院での学びを得る機会を頂いたが、心よりの感謝と共に、それをもって新生活での飛躍の糧としたいと思うこの頃である。

法学部ゼミ連ソフトボール大会にて(筆者最前列左から二人目)
 

 



先生のような学者に

韓 君玲

 光陰は矢のごとく、あっという間に七年間の広島大学での留学生活が過ぎ去った。その思い出は一生涯忘れられない。実りいっぱいの留学生活ができたのは、ひとえに指導教官の田村和之先生のお陰であった。
 学問に厳しく、標点符号でさえ少しのミスも許さない先生、また人情味の溢れる親切な先生、先生、研究指導をしながら、さりげなく日本語の表現や発音を訂正してくれた先生、研究者それに教育に携わるものとしての基本を教えてくれた先生、……その場面場面を思い出すと、先生の学生で良かったなあとしみじみに思う。
 先生について研究ができたのは自分の誇りにして行きたい。そして、これから学者の道を歩もうとする私は、先生のような研究者になろうと心の中で誓った。
着物姿の私
 
 
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