医学部


卒業にあたって 〜医学教育を考える

医学部医学科 井上 真一

 現在広島大学医学部医学科は、五十年間見直されることなく継続されてきた医学教育を大きく改革しようとしている。
 そこで、私の提案を聞いてほしい。臨床に限っては、思いきって授業をなくしてはどうだろうか。その代わりに、二年くらいかけて、今の倍の長さのポリクリ(臨床実習)を回るようにしてはどうか。
 実際の医療の現場において、患者を見ながら疾患について学んでいく方が、確実に学習意欲をそそり、また、理解度も深まる。担当の症例について、学生が自主的に学習しグループ内で学習会を開く。それをレポートにまとめ試問を受ける。他人の症例についても、もちろん理解していなければならない。そのレポートと試問をもって、卒業資格とする。
 そして、ポリクリが一通り終わった後、各自が興味を持ったり、入局を希望するようないくつかの科を、さらに、長期実習としてもう一度勉強できたり、外部の関連病院に行けたり、県外の病院に行けたりすれば、自分の将来の医師像を明確にするよい手がかりとなるのではなかろうか。
 これくらい特徴的な専門教育を行えば、より優秀な人材が我が大学に入学してくれるかもしれない。
 「そんな事は分かっている。しかし、時間的に、人材的に無理だ」などとおっしゃらず、ぜひ前向きにご検討ください。


 



薬学科での四年間

医学部総合薬学科 野村 久美子

 卒業を間近に控えて振り返ってみると、広大に合格して喜んでいたのが、つい昨日のように思われる。
 一年目の西条キャンパスでの一般教養では、薬学で何をやっていくのかが自分の中ではまだ漠然としたものであったが、二年目からの霞キャンパスでの専門講義や実習を重ねるにつれて、薬学の分野の広さに驚くと同時に、少しずつそれを学んでいくことに忙しいながらも充実感があった。
 四年生になっての一年間は、研究室に配属され、卒論のための実験を続ける毎日であった。三年生までの講義を受ける一日とは異なり、自分でその日の実験計画を立てて行動することに初めは戸惑い、また実験も失敗の連続だったが、研究室の行事や先輩方の話を聴く機会も多く、四年間の中で一番印象に残る一年だったと思っている。
 努力の甲斐あって、卒論も無事仕上げることができた。またこの一年教授や先輩方の指導を受ける中、薬剤師になることとはまた別に、研究に携わる人々の姿にも興味を覚えた。
 私自身は春から社会に出て、薬剤師として勤めることになるが、薬学科で学んだことはもちろん活かしていくとともに、常に新しいことを学んでいく姿勢を持って、これからの自分の人生を創っていきたいと思う。

 



保健学科卒業にあたって

医学部保健学科理学療法学専攻  下江 麻衣子/友村 奈津子

 私たちは少しの不安と大きな期待を胸に保健学科の三期生として入学しました。
 一年生の時は一般教養の講義ばかりで、二年生になって時間割が専門科目で埋め尽くされました。そのギャップに対応しきれず、理学療法士になるとどんなことができるのか、自分はいったい何がしたいのかが分からないまま何となく過ごしていました。
 でも教官から、私たちにはいろいろな可能性があること、その気になれば何だってできるということを教えていただきました。そういった励ましもあり、専門的なことに限らず大学時代にはいろいろなことにチャレンジできたと思います。
 四年生になり迎えた臨床実習では、「広大」という名前がとても重く、何もできない自分を情けなく思ったこともありました。それでもありがたがってくれた患者さん、自分のできることをすればいいと言ってくれた実習指導者が、ぽんと背中を押してくれました。
 周囲の人々のアドバイスや励ましがあり、卒業を迎えた今、みんなそれぞれ自分なりの理学療法士像ができつつあるのではないかと思います。就職・進学と進む道はさまざまですが、この大学の卒業生であることに誇りを持ち、自分の進む道を信じていつも輝いていられたらと思います。
 
広大フォーラム29期7号 目次に戻る