フォトエッセイ(35) キャンパスの動物

文・写真 都築 政起   
(Tsudzuki, Masaoki) 
生物生産学部畜産科学講座助教授






ウコッケイ
Silky Fowl
 

ウコッケイの白色内種ヒナ

ウコッケイの黒色内種メス

ウコッケイの白色内種の雌雄(手前の1羽がオス,他はメス)

セキショクヤケイのオス

セキショクヤケイのメス
  
 ウコッケイ。奇妙な響きの名前である。漢字で書くと「烏骨鶏」。「烏」はカラス、すなわち「黒」を意味する。「骨」と「鶏」は読んでそのまま、「ホネ」と「ニワトリ」である。総じると、「骨が黒いニワトリ」ということになる。
 実際にウコッケイの骨は黒い。と言っても、より正確には、少し紫色を帯びた濃褐色である。骨の他にも、皮膚、内臓表面等も黒っぽい。この他にもウコッケイは多くの風変りな特徴をもち、まさに「突然変異の見本市」ともいえる存在である。
 その特徴を列挙すると、一. 成体になっても全身に糸毛(ヒヨコのような毛)をもち、通常の鳥類にみられるような正羽をもたない。二. クルミのような形のトサカをもつ。三. 通常のニワトリは後肢の中足部(ウロコのある部分)に羽毛をもたないが、ウコッケイではこの部分にも糸毛が生えている(脚毛と呼ぶ)。四. 足の指が五本ある(通常のニワトリでは四本)。五. 頭頂部にはトサカの他に冠状の糸毛が存在し、頬部および咽喉部には髭状の糸毛が伸長する。六. 耳たぶが青色である(通常のニワトリでは白色もしくは赤色)等々である。
 ニワトリの祖先種であるセキショクヤケイ(赤色野鶏、Gallus gallus)と比較対照願いたい。家禽化(ヤケイからニワトリをつくること)の過程において、いかにその形態が変化したか、おわかりいただけると思う。
 このウコッケイ、日本へは江戸時代の初期にチャボやシャモと相い前後して、中国からもたらされたと考えられている。大元の原産地がどこであるのかハッキリしたことはわからないが、インド、ベトナム、あるいは中国ではないかとの説がある。日本以外のアジア諸国にも日本のウコッケイと似通った特徴を備えた品種が現在も存在している。
 また、古くから日本や中国では、ウコッケイの卵肉には薬効があると信じられ、珍重される向きがあるようである。真に薬効があるのかないのか筆者は知らないが、その珍奇な形態が神秘性を感じさせ、薬効云々の基になっているのかも知れない。


 
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