生物生産学部


直面する問題の中から新たな展望を

生物生産学部長 三國 英實

 卒業生、修了生の皆さん。皆さんの人生の新たな門出を心よりお祝いいたします。
 本学部では四年前に学部教育の改革を行い、六コース制での最初の卒業生が旅立つことになります。就職協定の廃止や経済不況、倒産が続くなど、厳しい就職環境の中で自分の道を捜すのに苦労されたことと思います。こうした困難を乗り超え、今、就職あるいは進学に意欲と希望を新たにしていることと考えます。
 さて、私たちをとりまく環境は、不透明なことが多く見通しを持てないように見えます。昨年十二月の京都での地球温暖化防止会議では、自分たちの国がなくなるという小島嶼国連合の深刻な訴えに対しても、期待に応えることができませんでした。環境保全が生産力の発展を押さえるという大国主義的な考えが背景にあります。人類の生存が脅かされている今、産業革命以来の化石燃料消費と炭酸ガス排出のあり方を見直すことが求められています。
 私たちは困難な問題に直面した時、その問題の中から新たな解決法を見出していくことができます。世紀末現象を決して悲観するのではなく、二十一世紀の理想社会実現のために、新たな展望を見出していくことが大切です。
 生物生産学部、生物圏科学研究科では、生物圏における環境保全を図りつつ生物の生産性を高め、生物資源の有効利用を実現し、人類の持続的な生存と福祉に貢献するという理念で教育研究を進めています。この学部と研究科を卒業・修了された皆さんのますますのご活躍を期待いたします。

留学生とのパーティで 三國学部長左端
 

 



意気揚々と、そしてお元気で!
(チューターを代表して)

生物生産学部 チューター長 橋本 博明

 卒業を迎えられた皆さん、おめでとうございます。入学時のガイダンス、オリエンテーションキャンプから始まって、この日を迎えられ、長いようで、短かった気もしていることと思います。
 皆さんは、生物生産学部で六コース制になって初めての学生でした。我々チューターも、新制度で試行錯誤したように思います。
 人と人との関わりの中で、人はまた成長していくものと思いますが、学生と我々の関わりも同じことが言えます。その意味で、学生諸君と人生の一時期、広島大学にあったこの時期に、関われたことは幸いでもあります。
 大学卒業は、やはりもう戻れない時間を区切る一つの節目であります。何はともあれ旅立ちは、立ちは、どうか意気揚々と行って欲しいと思います。そして、どうか元気で。

 



四年間を振り返ってみて思うこと

生物生産学部四年 大西 弘子

 高校三年生の夏休み、この広島大学と初めて対面しました。東広島駅から大学までのあまりののどかさが気に入り、また、生生のオープンキャンパスで飲んだ、搾り立ての牛乳の味にひかれて、広島大学に入学しました。勉強もそこそこにサークルとスキーばかり、親に申し訳ないとは思うけど自分なりに満足の四年間でした。
 心に残っているのは、オリエンテーションキャンプ、旅行、バイト、やっぱりサークルかなあ、と思いつつたくさんの友だちを得たことが一番の思い出です。サークルでは他学部の、バイトでは年齢を越えた友だちもできました。二十歳にもなって恥ずかしいけれど、本気でケンカしたおかげで、本当の友だちになれたことは一生忘れない思い出です。
 高校三年の時、先生から言われた「大学は人生の春休みだ。一生つきあえる友だちを作れ」という言葉の大切さを実感しています。たくさんの思い出をくれたこの広島大学に感謝し、三月二十五日、卒業していきたいと思います。

▲研究室のゼミ旅行(ユゲ島)で 筆者前列右から2人目
 
 

エラブでの三年間を振り返って

生物圏科学研究科博士課程前期二年水産資源学研究室 岡本 崇

 エラブといっても沖永良部島じゃないよ。あっちは観光地だけどこっちはほとんど何もない。研究室に入ってから三年間、研究のフィールドは口永良部 島だった。この島の住人として広大が加わって二十七年たつ。青春の最後にこの島に関われたことは幸運なことだった。
 島の共通言語は焼酎である。エラブに行きたいと言ったとき、先生に言われたことは「焼酎を飲めるか」だった。それまで焼酎など飲んだことはなかったが、今では焼酎ばかり飲んでいる。島で一緒に飲む人たちはいい中年なのに、何でここまでアホになれるかというくらい酔っぱらい語る。が、翌日はけろっとして働いている。夜の姿が信じられないくらい昼間はまじめで寡黙である。
 台風、釣り、魚突き、山登り、温泉、鹿肉、棒踊り、運動会、敬老会。島の行事は、毎回違っている。肉体的、精神的にもエキサイティングである。島でしかできないこと、島ではできないこと、どちらが贅沢なのだろうか。両方できた自分はきっと贅沢だったんだろう。
 毎朝、夜明けの海で潜ったときのブルーな感覚は忘れることはない。三年間のエラブ体験は、魚類生態学より文化人類学を研究しているようだった。
離島で民家を借りて「自活しながら… 」の研究生活
 

 
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