リンシューピン大学との学術・教育交流協定の締結 
文・ 塩谷 優(Shiotani, Masaru)
工学部 第三類 応用化学講座教授



 スウェーデン・リンシューピン大学と広島大学との間で学術・教育交流に関する協定が昨年9月に締結された。
 この交流協定がスタートするに至った経過と現状を紹介し,学内の教職員,学生諸氏の関心を期待したい。

【リンシューピン大学の概要】

 リンシューピン(Linkoeping)大学は、首都ストックホルムの西南、約二百キロに位置するリンシューピン市にある。三学部、学生数約一万五千人、教職員数約二千四百人を擁する、本学とほぼ同規模の大学である(http://www.liu.se/)。歴史は浅いが(一九六九年に創立)、ウプサラ等の歴史の古い大学ではできない新しい教育・研究システムを積極的に導入している大学である。
 母体である文化科学部(一八四三年に創立)に加えて、科学技術学部と保健科学部からなり、各分野の教官・学生の交流を積極的に推進し、幅広い基礎学力と高い専門知識をもつ人材の育成に力を注いでいる。
 特に、従来の学部及び学科の枠にとらわれず、境界領域を巧みに取り込んだ教育プログラムの質と設備の充実はきわめて高く、北欧では最高水準にランクされる大学である。北欧最大の科学団地(MJARDEVI,約百の研究機関からなる)がキャンパスに隣接し、大学との間で活発な研究・開発協力が行われている。


【交流協定締結に至る道筋】

 科学技術学部のルンド教授と筆者は、十年前より「磁気共鳴分光法の物理化学への応用」に関する国際共同研究を開始した。日本学術振興会、スウェーデン自然科学研究財団等の援助を得て、現在までに双方で延べ十人の研究者の相互交流を行ってきた。
 これらの研究交流の過程で、同大学SWETECH(Sweden Technology in Foreign Countries)プログラムの責任者であるタンバール教授から「リンシューピン大学では、国際産業経済の専門家を養成するための五年制のプログラムを、一九九四年度に発足させた。ついては、広島大学に毎年二名の学生を交換留学生として派遣し、日本文化、日本の産業経済等について勉学させることができないか」との申し出があり、交流協定締結の仲介役を務めることになった。
 交流協定にかかわる準備のため、タンバール教授は三回本学を訪問され、また筆者は、工学部国際交流協定準備助成を得て、九六年三月にリンシューピン大学を訪問した。原爆放射能医学研究所の星正治教授(附属国際放射線情報センター)の協力を得て、同研究所と工学部が幹事部局となり交流協定を締結する運びとなった。


【交流の現況】

 交流協定のスタートにより、リンシューピン大学から二名の学部学生がHUSA(Hiroshima University Stay Abroad)プログラムの短期交換留学生として、現在本学で勉強している。さらに、大学院学生一人が特別研究学生として、筆者の研究室で博士論文研究に従事している。
 本学からは、工学研究科博士課程後期の学生一人が、工学部留学奨学金による初めての留学生として科学技術学部に派遣され、博士論文研究に取り組んでいる。
 学術交流については、これまでの研究室レベルの共同研究は、昨年来STINT(The Swedish Foundation for International Cooperation in Research and Higher Education)からの研究助成を得て、両大学間の国際共同研究「有機および生化学系の放射線物理および化学」に発展している。


【交換留学生募集】

 ご存知のように、スウェーデンは人口の点では日本の一割にも満たない小国であるが、長年試行錯誤を繰り返し、優れた社会システムと人的資源を獲得した世界の最先端国である。
 今回の学術・教育交流協定のスタートにより、本学からも毎年二名の学生が交換留学生としてリンシューピン大学に派遣可能となった。学部生、大学院生は問わない。また、専門分野も問わない。勉学意欲の旺盛な、優秀な学生が応募されることを期待したい。講義についていける英語力が必要である。詳細は筆者に問い合わせていただきたい。


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