新入生の皆さん、入学おめでとう。 私たち広島大学は、全横成員をあげて皆さんを心より歓迎いたします。皆さんは難関を見事突破され、めでたく広島大学に入学されました。 昨年、広島大学はこの東広島市に移転を完了し、一つのキャンパスとしては日本で一番広く、最も美しく整備された大学へと発展してまいりました。 また、本年度より大学院大学としての新たな発展が約束され、二十一世紀には日本を代表する大学というだけでなく、世界に情報を発信する大学としての基盤整備が整ってきています。 今、皆さんは不透明でボーダーレス、各種の社会不安を伴った世紀末の入学生として広島大学に入って来られました。 歴史的にみましても、世紀末はいつも大きな不安、変動を伴っていたようで、世界的な大きな事件もよくありました。日本の経済、社会、政治も、この数年ご存知のように混乱をきわめており、これも世紀末の一現象かもしれません。 さて、この二十世紀をふりかえってみますと、この世紀を支配した近代科学と合理主義のパラダイムが終わろうとしています。近代科学の発想は、最小単位としての原子を機械的に組み合わせ、世界の全存在を説明しようとしました。この機械論による工業化社会は生産性を高めましたが、他方では地球環境を大きく変え自然破壊につながり、今や地球の危機がおとずれようとしています。先般の地球温暖化防止の京都会議は、これらの危機感から出たものです。これからも全世界の英知を集めて地球を守っていかなければならないと思います。 人類は地球の破壊者になってはなりません。今や、失われつつある人間の精神性を再び取り戻し、自然を敬い、神を恐れ、人を愛するという人間本来の心に戻らなければならないと思います。 皆さんは二十一世紀の幕開けを我が広島大学で迎えます。まさに皆さんこそ二十一世紀の担い手です。しかし、皆さんがこれから始める大学生活とそれを取り巻く社会は、皆さんの先輩諸君の通って来た道より厳しいものになるかもしれません。 十八歳人口の減少と五〇%をこえる大学進学率は、十年後には全員が大学合格の可能な時代となります。その時、大学卒ということが皆さんのキャリアとしてどれだけ効力があるかわからない時代になります。また、終身雇用という日本独特の家族主義的な雇用体制も次第に変わり、個人の能力・個性が真に問われる時代となりましょう。 これからはそれぞれが固有の感性を高め、自らの知性をみがき社会に貢献できる人になってもらいたいものと思います。その高い知性を備えたみなさん一人ひとりの存在こそが、二十一世紀を支える力となるのです。そのためには、自分が何が好きか、自分の一生を通じてやれることは何かを探し求めていただきたいと思います。 目標が決まれば、その目標に向かって情熱をもって日々精進し、継続すれば、皆さんは何事かを達成できるのです。 また、大学は友や師に出会う場でもあります。皆さんはどうぞ志を高く持ち、心を広く、自由に自分の進む道を求めて邁進してください。 皆さんは二十一世紀の担い手です。皆さんが二十一世紀を拓くのです。この広島大学で学ぶことに誇りを抱き、自らの生命を大切に日々精進されることを祈念して私の祝詞といたします。 |