医学部長 松浦 雄一郎
何はともあれ、ご入学おめでとう。君たちは、何をしたい、何をしようとして広島大学に進学してきたのか、今一度ここで自問してみて欲しい。
わが国の大学入試の現状を見てみると、大学に入ることが、学生生活の一つの最終目標のように考えられているようだが、ことに医学部に入学できたということは、ここで初めて真の学生生活の第一歩を踏み出すことを許されたことを心得て欲しい、と言いたい。その第一歩を、しっかりと両足で踏み出してもらいたい。
右足は、人間学としての医学を、職能とする己を磨くための第一歩である。自分の場合は、ショーペンハウアー「孤独と人生」、アラン「人生論集」、ヒルティ「眠られぬ夜のために」、カフカ「実存と人生」、福沢諭吉「学問のすすめ」等を漁った。
左足は、医療を担当する職業人としての修行を目指しての第一歩と考えてもらいたい。自分の場合は、講義を中心に聴き、図書室の片隅などで自習などした記憶はない。
医学は一面において、実践であり経験科学でもある。教科書もさることながら、経験多い教官からの生きた声を聴き、患者さんという尊い教科書に接することである。すなわち、真の学問とは、これまでのあたかも学問としてたたき込まれた受験術とは異質のものなのである。一日も早い真の学問を追求する大学生活への変身を願って、歓迎の言葉としたい。
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