教育開発国際協力研究センターは今  
センター オブ エクセレンスを目指す
教育開発国際協力研究センター

 広島大学教育開発国際協力研究センター(Center for the Study of International Cooperation in Education、略称CICE)は開発途上国に対する教育分野での国際協力について実践的な観点から研究・開発を行い、加えて国内外のネットワークの拠点的機能を果たすことを目的に設置された、我が国ではこの分野で初めての研究機関です。
 CICEは国際教育協力に関する実践的・開発的な研究を行う他、実際に国際協力事業団などが実施する途上国からの教育分野研修員の受入れや現地での教育プロジェクトの形成・評価に協力しています。
 CICEは平成十年四月から新しい国際協力研究科棟の六階に入り、これまで収集した教育開発・国際協力分野の図書も公開し始めます。学内の皆さんが講演会や図書の利用を通じてCICEの活動に積極的に参加して下さることをお待ちしています。

 
CICE設立の経緯
 教育分野での国際協力はその重要性が国際的に再評価され、世界有数の援助供与国として、我が国にも積極的な国際貢献を求める声が高まっています。
 教育協力を効果的・効率的に実施するためには、我が国がこれまでの実践の中で蓄積してきた知識と経験を集約すると同時に、教育協力において経験豊富な他の援助供与国や国際機関と連携し、そうして得られた知見を基礎としながら、国際教育協力についての実践的・開発的研究を推進することが必要です。
 このような問題認識のもと、広島大学教育開発国際協力研究センターは開発途上国に対する教育分野のでの国際協力について実践的な観点から研究・開発を行い、国内外のネットワークの拠点的機能を果たすことを目的に、平成九年四月に設置されました。

西アフリカ初等教育行政コース研修生とセンター教官



CICEの活動


■研究活動
 初等教育、識字教育、女子教育、障害児教育、理数科教育、教育行政、高等教育などの分野における国際教育協力のあり方に関する実践的・開発的研究を行っています。国際教育協力に関する我が国初めての研究機関として、教育協力のための実践研究という分野を切り拓いていくことを目標にしています。具体的には次のよ うなテーマで調査研究活動を行っています。
a. 我が国の教育開発経験の途上国に対する移転可能性の分析的研究
b. 諸外国、国際機関の国際教育協力政策の分析的研究(平成九年度は英国、フランスで現地調査を実施)
c. 国際教育協力の推進における大学などの高等教育機関の参加促進に関する研究
d. アフリカ地域における教育協力のあり方に関する現地調査研究
(平成九年八、九月ケニア、南アフリカ、コートジボアールで現地調査を実施)
(平成十年三月エジンバラ大学アフリカ研究センター長であるキング教授を招へい)

■国際協力事業の実施・協力
 CICEは国際協力事業団等が実施する教育分野での国際協力事業を支援しています。平成九年度に実施・協力した事業は次のとおりです。
●西アフリカ仏語圏諸国初等教育行政集団研修、南アフリカ共和国教育行政集団研修の実施
●ケニア中等理数科教育強化プロジェクトへの協力
●ガーナ教育基礎調査への協力、ガーナ教育省次官、ガーナ国会議員(前教育大臣)との日本の教育協力に関する協議
●ザンビア教育省技術協力局次長、ドミニカ共和国教育文化省学校建築部長の日本の教育に関する研修
●アフリカ女性教育者同盟事務局長(ナイロビ大学教授)によるシンポジウム開催とアフリカにおける日本の教育協力に関する協議
●サウジアラビア教育省次官以下二十一名に対する日本の教育に関する研修

 途上国からの研修員の受入れはCICEだけでなく学内の他の部局でも行っています。この制度は留学とは異なり短期間広島大学において集中講義や現場見学を行い、途上国の主に行政官や技術者に研修してもらう制度です。
 短期の滞在で日本語を十分に習得する時間もなく集団で研修しているため、学内の日本人や留学生の皆さんと交流する機会はなかなかありません。研修をより実りあるものとし、良い思い出を作ってもらうためにも、皆さんのご協力をお願いいたします。

■国際教育協力に関するデータベース整備
 CICEは全国の大学が有する人的資源を最大限に活用し、国際協力をより効果的にするため、人材データベースを構築し、各大学間のネットワーク(コンソーシアム)の形成、専門家間の交流促進、教育分野での国際協力を行う政府機関や、NGO、国際機関に対する人材情報の提供などに役立てています。すでに国立大学 から約八百名、私立大学から約三百名の教育研究者の登録があり、これまでにエチオピアや南アフリカなどへの専門家派遣に利用されています。
 また、教育協力関連の書籍や資料を収集し、情報センターとしての機能を充実させていく予定です。教育協力関連の情報を収集しインターネットなどを通じて公開しています。
http://www.ipc.hiroshima-u.ac.jp/~cice
 ぜひ皆さんもアクセスしてみて下さい。

■研究員集会  平成十年二月十三、十四日にCICEは第一回の研究員集会と公開講演会を開催しました。公開講演会ではODA報道では第一人者の杉下恒夫氏(読売新聞社解説部次長、CICE客員研究員)を迎え、「人づくり・国際協力の道」というテーマで講演を行っていただき、九十名以上の参加を得ました。第一回研究員集会では 学内外から選ばれたCICEの研究員が一同に会し、文部省、国際協力事業団、海外経済協力基金、ユニセフ駐日事務所、ユネスコアジア文化センターの代表者も交えて、日本の国際教育協力のあり方について活発な議論を行うことができました。

 CICEは設置されてやっと一年です。教育協力分野のセンター オブエクセレンスとして志を高く掲げ、活動を開始しました。教育や国際協力に豊かな歴史と人材のある広島大学でこれからますます大きく活動を展開します。皆様のご支援をよろしくお願いします。

看板を掲げる右から原田学長、二宮センター長、小笠原副学長、西村事務局長
教育開発国際協力研究センター位置図




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