歯学部長 長坂 信夫
二十一世紀を目前にして、我が歯学部に入学された諸君に対して、心からおめでとうと祝福したい。諸君たちが選んだ本学部は、国立大学の歯学部では三番目にできた学部で、十一ある国立大学歯学部の中でも歴史のある、そして、中四国地区の中心となる歯学部であることを誇りに思ってほしい。 ほとんどの諸君は、今までは生徒として取り扱われきたが、今日からは学生として扱われることになる。学生とは、自由独立の精神と正義の批判力が要求され、与えられた学生の任務を諸君自身の判断力と責任において、遂行しなければならないことが求められているのである。 歯学部では身体の中の顎、顔面、口腔領域の基礎的歯科医学と、臨床的歯科医学を基本とした研究や治療および実技を学び、諸君たちは、それを各地域の国民の健康維持に役立つことができるよう勉学に勤しみ、そして、充実した学生生活を過ごすと共に、自分自身の人間性を深め、人としての調和のとれた人間形成に努めてほしい。 人間というものは、元旦とか、誕生日であるとか、卒業、入学という機会を記念して、何か意識を新たにし気持ちを引き締め、新しいことに挑戦する気持ちを持つのが自然である。諸君たちもこの機会を利用して何かに挑戦する姿勢が欲しい。 それがどんなことであっても、どんな小さいことでもよい。しかし、それが自分自身の人生のためにプラスになり将来に役立つことでなくてはならない。そして、人に迷惑をかけないこと、人の悲しみがわかる気持ちを持ってもらいたい。 |
校外実習風景 |
歯学部学生 福井 康人
新入生のみなさん、入学おめでとう。これから始まる大学生活に大きな期待を持っているであろう今だからこそ、みなさんに考えて頂きたいことがある。それは、社会に求められる歯科医師とはどのようなものであるか、ということである。 歯学部という学部は、入学した学生のほとんどが歯科医師になるということで、他学部と比較すると特殊な学部で、また講義も歯学、医学に関することが中心となり、歯科の知識があれば歯科医師になれるというような錯覚に陥り、歯学部での学生生活は歯科医師になるための通過点にすぎない、と誤解しがちである。 しかし、そのような「専門バカ」な歯科医師が社会に求められているのであろうか。もし我々が人形や模型を相手に治療を行うならばそれでもかまわないであろう。だが我々が相手にするのは人間なのである。それもさまざまな年代の、さまざまな職業の人間を相手にするのである。 当然、治療を円滑に行うには、信頼関係の構築が不可欠で、それには広い知識と社会人としての常識が必要だと思われる。つまり高い教養と優れた人間性を持つ歯科医師こそが、、社会に求められる歯科医師の姿なのではないであろうか。 六年間という少々長めの学生生活の中で、勉強だけでは得られないものを積極的に吸収し、みなさんにとっての学生生活が有意義なものとなるように期待する。 (ふくい・やすと)
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