広島大学生の交通安全意識と
 東広島キャンパスの交通安全評価  


文・杉恵 頼寧 (Sugie, Yoriyasu)
交通問題対策委員会専門委員会委員長

 交通問題対策委員会専門委員会は、毎年四月駐車証申請時に交通安全講習会を実施しています。その講習会の資料とするため、平成九年十一月広島大学生の交通安全意識に関するアンケート調査を実施しました。対象は学部二、三、四年生で、二、三年生については、各学部の交通問題対策委員会専門委員に調査票の配付回収でお世話になりました。
 その結果、工学部一六五人、生物生産学部一〇九人、教育学部一四八人、学校教育学部七十二人、法学部六十二人、経済学部九十人、文学部四十一人、理学部六十人、総合科学部一〇五人の合計八五二人の回答を得ました。
 調査項目は、一、個人属性 二、学内の交通安全の取組み等に対する評価 三、安全運転の心掛けに対する評価 四、下見街道の運転環境の評価 五、東広島キャンパスの交通安全点検の五項目です。
 なお、日頃車を運転していない人には、一と五のみについて回答してもらいました。ここでは、四を除いた各項目の主な結果について報告します。
 
一.自動車利用状況

 広島大学の学生の性別、学年別、住所別の自動車の利用状況を図-1、図−2、図−3に示します。図−1より男性は女性に比べ自動車を利用している割合が高いことがわかります。また、図−2より学年が上がるにつれ自動車を利用している割合が高くなっています。図−3からは、大学から居住地が離れるにつれ自動車を利用している割合が高いことがわかります。
 ただ、広島市から通学している学生は電車、バスといった公共交通機関が十分整備されているため、自動車を利用しない割合が高くなっています。ここで、広島大学周辺とは、御薗宇、下見、田口、西条駅前、西条中央を指しています。
 本調査は、主として通常自動車を利用する学生を対象としたものです。以下はそれらの学生に対する質問項目の集計結果を示します(今回の調査ではほぼ半数が該当)。






二.交通事故の実態

 これまでに事故を起こしたことの有無、そして、事故を起こした経験のある学生が実際にどのような事故を起こしたことがあるかについて示したのが図−4です。半数以上の学生が一度は事故を起こした経験を持っており、事故を分類別にみると、事故の相手として物(構造物)や自動車が多いことがわかります。
 また、「車を運転している時、交通事故の危険性を感じますか」という質問項目に対する集計結果を図−5に示します。  交通事故はいつでも、どこでも、どんな状況でも起きていることを考えれば、自動車を利用する人は、いつでも事故を起こすかもしれない、という認識が必要だと言えるにもかかわらず、どちらでもない、あまり感じない、感じないと回答した割合は全体の約三〇%になっています。


三.安全運転の心掛けに関する評価

 交通安全の観点から、シートベルト、制限速度、飲酒運転といった基本的な順守事項に関する項目に対して、どの程度心掛けて運転しているか、という質問を設定し五段階で評価してもらいました。
 図−6はその集計結果を示したものです。( )内は「常に心掛ける」、「時々心掛ける」、「どちらでもない」、「あまり心掛けない」、「心掛けない」の回答にそれぞれ二点、一点、○点、マイナス一点、マイナス二点と点数を付け、その平均を示しています。この点数が高いほど、心掛けている度合いが大きいことを意味しています。
 「シートベルトをつける」は得点が最も高く、大半の学生が常に心掛けているといえます。「飲酒運転をしない」の項目も多くの学生が心掛けているといえますが、飲酒運転は重大事故につながる危険性が高く大変危険なので、全ての学生が飲酒運転をしないように常に心掛けてほしいものです。
 広大生の交通事故の急激な増加を考えると、「長時間の連続運転は避ける」、「運転中は携帯電話を使用しない」の項目についてもさらなる心掛けが必要だといえます。
 「強い雨の日や深夜は運転しない」は得点が最も低く、それを心掛けない人が多いのは、学生が夜型の生活スタイルであるためですが、深夜の事故は重大事故に結びつく可能性が大きい、ということを肝に銘じて、安全運転に気をつけて欲しいものです。
 また、総合的に判断して、学生の多くが「日頃安全運転を心掛けている」と思っているといえますが、必ずしもそう思っていない人も二九%おり、これらの学生に対する交通安全意識の高揚が交通安全講習会で必要になります。


四.駐車証申請時の交通安全講習会の評価

 一六%の学生が駐車証を持っておらず、交通安全講習会を受けていない学生が全体で約九%いることがわかりました。平成八年十二月の駐車場実態調査によると、一六・三%の車が駐車証不提示の違法駐車であり、その事実を裏付けた結果になっています。
 図−7は昨年四月、各学部で行われた交通安全講習会の有益性について、受講した学生に五段階で評価してもらい、その集計結果を示したものです。「あまり有益でない」+「有益でない」が「やや有益」+「有益」を一六%も上回っており、有益でない」+「有益でない」が「やや有益」+「有益」を一六%も上回っており、現在の講習会に問題の多いことを示しています。
 次に、交通安全講習会をさらに充実させる対策として何が望ましいかを、少人数で行う、実技の講習を加味する、外部の専門家を呼ぶ、講習の時間を長くする、講習専用のテキストを使用するの五項目から該当するものを選んでもらい(複数回答可)、その集計結果を図−8に示します。
 どの学部の講習会においても、少人数で行うや外部の専門家を呼ぶことが有効な対策であると回答した学生が多くなっています。ただ、総合科学部では実技の講習を加味することが望ましい対策であると回答している学生が多くなっています。  その他の自由意見としては、簡潔に短く内容のあるものにする、回数を増やす、毎年内容を変える、といったような意見が多くありました。回数を増やすという意見に関しては、人数が多すぎるので何日か行う、夏休み等の大きな休み中に免許を取る学生が多いので年数回行う、という意見に分かれていました。


五.他の学内の交通安全の取組等についての評価

 図−9は交通指導員による構内の駐車違反の取締りや交通安全指導について、五段階で評価してもらいそれを示したものです。
 適切と不適切の回答数にほとんど差はみられません。また、取締りや交通安全指導の改善すべき点があれば調査票に具体的に書き込んでもらいました。
 その主な意見は、違法駐車の取締りの強化、駐車証を駐車可能台数以上に発行しているのに取り締まるのはどうか、交通整理などの交通安全指導に重点をおくべき、といったものでした。
 図−10は広大生の重大事故が急増していることをどのように受け止めているかを質問した結果を示したものです。  多くの学生が深刻なことと受け止めていることがわかります。また、この質問にも何か適当な対策があれば調査票に具体的に書き込んでもらいましたが、それらの意見の大半が、各々の運転に対する意識の問題で、各自が気をつけるしかないといったものや、事故を他人事と思っているという内容のものでした。
 図−11は「広大フォーラム」等の交通安全や交通事故に関する記事を読んでいますかという質問の集計結果です。
 半数の学生が読まないと回答しており、学生にあまり読まれていないことがわかります。読んでもらえるような何らかの工夫が必要であり、交通安全講習会でその記事を活用することも考えられます。


六.東広島キャンパスの交通安全マップ
 図−12は、東広島キャンパス内で危険だと思われる地点を具体的に記入してもらい、る地点を具体的に記入してもらい、危険だと指摘した人数が多かった地点を示した地図です。特に指摘数が多かった地点は、主な危険理由をグラフ化しています。コメントを述べているのはその地点のその他の主な意見です。
 通常自動車を利用しない学生の主な危険理由としては、理学部駐車場周辺では朝夕の混雑がひどく、車やバイクが一時停止をしない、また、工学部周辺の違法駐車で歩道が通れない、横断歩道を渡ろうとしても車やバイクが止まらないといった、車やバイクを運転する人の運転マナーの悪さを指摘していました。
 また、通常自動車を利用する学生も同様に、理学部駐車場周辺では混雑して危険であると指摘した学生が多くいましたが、他の主な危険理由として、西体育館前のコンクリートの出っ張りが危険、さらに信号のない交差点における優先順位がはっきりしない、街路樹や駐車場の植栽等で見通しが悪い等の道路の施設や構造の問題点についての指摘が多くありました。


図−12 東広島キャンパスの交通安全マップ






七.交通問題対策委員会の最近の活動について
 交通問題対策委員会は、東広島キャンパスの駐車場問題を解決する対策をこれまで真剣に検討してきました。そのためにはゲートの設置がどうしても必要という結論に達し、その実現にむけて努力を続けていますが、多額の費用を要するため、なかなか実現のめどが立っていません。今なお事務局の方で文部省に働きかけてもらっているところです。
 そして、ゲートが設置されたときは、自動車による入構を駐車容量以下に抑え、違法駐車の取締りを強化することにしています。また、ゲートの維持管理費等を利用者に負担してもらうことにしています。



広大フォーラム30期1号 目次に戻る