フォトエッセイ(37) キャンパスの植物

文・写真 庄條 愛子 (Shojo, Aiko) 
大学院国際協力研究科 開発科学専攻



ハナミズキ
Cornus florida L.
 

総包葉が最も濃紅色になるテェロキー・チーフ(Cherokee Chief)。春の新芽も赤いので容易に他と区別することができる。包葉の中央に見られる黄緑色の部分が小花のかたまりである。

白色の巨大な包葉を持つチェロキー・プリンセス(Cherokee Princess)。その形が倒卵形で,先がくぼんでいるためによく似たヤマボウシの花と区別することができる。


大学事務局の駐車場脇の花壇に植樹されている二種類のハナミズキの木。青く 晴れた空とのコントラストが非常に美しい。
  
 曇りや雨の日が例年より多い、何とも春らしくない今年の四月であったが、晴れた日には急速な春の訪れを感じることができる。学内の樹木や花壇の植物、そして雑草までもが青々と葉を茂らせ、花を咲かせている。花壇のチューリップや道端のカラスノエンドウなどの花も春らしくかわいらしいのだが、私がきれいだな、と感じるのはハナミズキの花である。
 ハナミズキは高さ五〜十メートルの落葉中高木で、葉はミズキに似て水平に広く伸びる。葉は対生し長さ八〜十五センチの卵形で、表面は緑色、裏面は蒼白色、六、七対の側脈がある。和名の由来である「花の目立つミズキ」という意にふさわしく、春には葉に先立って大ぶりな花を枝いっぱいに咲かせる。
 しかし、我々が普段目にしているこの花は、実は十余個の小さい花の集合体なのである。一見して花弁のように見える部分は、実は包葉であり、本当の花はその中央部にある小さい黄緑色の部分である。またハナミズキは変異性に富み、花色(包の部分)の濃紅色のもの、花径の大きいもの、八重のもの、枝の直立性のもの、枝垂れ性のものなどさまざまな種類のものが存在するという。
 ところで、このハナミズキがどこの国を代表する樹木なのかご存じだろうか。実はハナミズキは、アメリカ合衆国東部が原産であり、ノースカロライナ州とバージニア州では、州花に指定されているアメリカ合衆国を代表する樹木なのである。そもそも日本への渡来も、当時の東京市長からアメリカ合衆国に寄贈されたサクラの苗木の返礼として贈られたのが、最初なのである。
 アメリカ合衆国を代表するこの花の和名を漢字で書くと、「花水木」と美しい花にピッタリな感じがするのだが、英名は"Dog Wood"と何ともさえない名前である。しかし、名前はどうであれ、四〜五月には学内のさまざまな場所でその花を楽しむことができる。


   

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