全国の実態調査も実施   
─平成9年度総合科学部学生相談室活動報告─


文・岩村 聰(Iwamura, Satoshi)
総合科学部講師

 平成九年度学生相談室では来談者数が減少した。
 減少の主な部分は、新入生による比較的短時間の履修相談で、数字に比例して学生相談室の仕事が暇になったわけでは決してないが…。
 従来学生相談室がはたしてきた役割の一部を、教養的教育委員会の履修相談窓口などが分担してくださるようになったことが影響しているものと思われる。
 このような発展は、学生相談の立場から見ても大いに歓迎すべきことであり、そうした機能とも連携しながら、学生相談室自身が担うべき役割は、より専門的なものに変わっていくことになるだろう。
 また、この年私たちは、全国の学生相談機関の実態調査を手がけ、さまざまな新しい情報を得ることができた。

 
一.カウンセリング

 来談者数の減少は、実数で二八%、延べ数で二五%であった。
 減少のもう一つの原因として、学生相談室カウンセラーの交替が影響していることも考えられる。過去の来談者統計においても、このような要因は、来談者数の一時的な落ち込みにつながることが常であった。この年、カウンセラーの交替は、非常勤講師の福留先生の転出と、大中、竹味両先生の着任があった。
 表1は、来談者実数の男女別、学年別、学部別内訳である。

表1 男女別、学年別、学部別来談者実数

平成9年度

平成8年度

199

275

110

 89

161

114

1年

2年

3年以上

院生等

93

30

41

35

181

23

40

31

総合科学部

文学部

教育学部

学校教育学部

法学部

法学部夜間主

経済学部

経済学部夜間主

理学部

医学部

歯学部

工学部

生物生産学部

院生等

25

12

11

13

8

8

7

1

23

18

4

27

6

36

29

28

12

24

15

3

4

1

54

33

-

38

3

31

 男女別来談者実数は、男女とも減少した。学年別では、一年生が四九%減少したが、二年生は三〇%増加し、その他の学年も増加した。学部別では、前年度の来談者が少なかった学部で増加したところがあったが、その他は全体的に減少した。中でも文学部、理学部などは減少が大きかった。
 なお、表中の「院生等」には、大学院生、研究生、卒業生、教職員、(記録上)身分不詳の来談者等が含まれている。
 表2は、来談者実数と延べ数の相談内容別内訳である。

表2 相談内容別来談者実数及び延べ(日)数

平成9年度

平成8年度

実数(名) 延べ(日) 実数(名) 延べ(日)

199

574

275

766

修学・進路関係

133

242

207

407

 進路関係小計

72

87

64

123

  就職

5

6

3

12

  進学

-

-

2

4

  留学・旅行

1

1

2

2

  休学・退学

2

2

1

1

  転科・転学部

26

31

17

22

  再受験

11

13

6

12

  留年

9

10

4

19

  その他の進路

18

24

29

51

 勉学・研究

44

61

122

183

 課外活動

4

10

1

3

 その他

13

84

20

98

心理・適応関係

59

325

53

344

 精神衛生

34

195

33

201

 対人関係

16

81

13

66

 自己探求

8

48

4

27
 その他

1

1

3 50
そ の 他

7

7

15 15
 経済生活 1 1 4 4
 その他 6 6 11 11
心理性格 9 49 7 77
対人関係 16 81 13 66
心身健康 34 195 33 201
進路修学 129 232 206 404
学生修学 5 11 5 7
その他 6 6 11 11
 相談内容別では、修学・進路関係、とりわけ「勉学・研究」の減少が著しかった。しかし、「転科・転学部」や、「対人関係」や「自己探求」はむしろ増加した。
 なお、末尾の「心理性格」など六項目は、全国学生相談研究会議の共通分類による再分類で、重複した数字になっている。
 表3は、来談者延べ数の月別内訳である。
表3 来談月別来談者延べ(日)数
平成9年度 平成8年度

574 766
4月 131 190
5月 54 68
6月 58 73
7月 56 38
8月 9 12
9月 12 56
10月 67 80
11月 46 69
12月 37 57
1月 44 54
2月 33 48
3月 27 21
 月別では、全体的に減少傾向だった中で、夏休みとなった九月の減少が著しく、授業日が増えた七月は反対に増加した。
 平成十年度、学生相談室は、表4のような体制で学生の相談に応じている。

表4 学生相談室案内
場所 総合科学部事務棟3階
電話 0824-24-6328,6329







月曜日 9:00am〜5:00pm  岩村 聰、大島 啓利
火曜日 9:00am〜5:00pm 竹味 千賀子、岩村 聰
水曜日 9:00am〜5:00pm 岩村 聰、大中 章
木曜日 9:00am〜5:00pm 竹味 千賀子
金曜日 9:00am〜4:30pm 岩村 聰
4:30pm〜6:00pm *オープン・フライデー
土曜日 2:30pm〜5:30pm *土曜友の会(月一回)
(*印は、グループ。担当、岩村)  受付:塚本英子
 学生相談室は、広島大学の学生の相談なら、なんでも受け付ける。
 勉強のしかた、成績不振、不登校、留年、休学、教員などの資格のとり方、留学、クラブ活動、宗教団体とのトラブル。進路変更、転科・転学部、大学再受験、就職、大学院進学、友だちづくり、対人関係、先輩や教師とのトラブル。失恋、性格、自己開発、不安、劣等感、性的な悩み、いじめ、迫害。経済生活、契約販売やローンのトラブル。交通事故、大学への苦情などなど…(そして、相談室だけで解決しきれない問題は、どこへ相談したらいいかを一緒に考える)。
 カウンセラーとの相談の特色は、まず、一対一で必要なだけたっぷり時間をかけて、必要なら回を重ねて相談にのってもらえること。また、相談の秘密が守られること。さらに、アドバイスの押しつけがないことなどである。あなたも、いつでも気軽に学生相談室を訪ねてください。
 また、不登校、留年、ノイローゼなど、指導困難な学生をかかえてお困りの先生方。どうぞご遠慮なく、学生相談室へご相談ください。


二.グループ

 学生相談室は、グループ活動も行っている。目的は、学生等の自己理解・自己確立や対人関係の発展である。
 「オープン・フライデー」は、授業期間中の毎週金曜日、午後四時三十分から六時まで開いている。昨年度は十三回開催。参加者は実数で七名。うち学部生二名、院生等四名、教職員一名。延べ数は三十二名。平均三名であった。
 参加者が減少し流会となる日も少なくなかったが、毎回必ず室温を整えお湯を沸かすなどして、他の仕事をしながら参加者を待つ体制を続けていたら、新年度は冒頭から四〜六名が参加して、よい雰囲気の会が続いている。
 「土曜友の会」は、月一回土曜日午後二時三十分から五時三十分まで開いている。この会は、広大生のほか、卒業生や社会人にも開放している。
 昨年度の開催回数は十二回。参加者は実数で二十四名。うち広大生一名、教職員二名、卒業生七名、その他十四名で、延べ数は九十三名。平均八名であった。この会の参加者はやや増加した。この会の今後の開催予定日は、六月十三日、七月十一日、八月八日、九月五日、十月三日などである。
 これらの二つの会では、気楽な雑談を交わしたり、誰かが最近の生活や当面している問題を話したり、みんながそれに感想を言ったり励ましの言葉を述べたりするような雰囲気になる。
 いずれも会員制ではないので、広大生なら誰でもいつでも参加できる。都合のいいときに(時間の途中からでも)自由に出入りしてもかまわない。参加者には、会費でお茶やお菓子やおいしいコーヒーなどが出る。二つの会が合同で季節季節のコンパなども行っている。こんなグループに、あなたも気が向いたときに参加してみませんか。
 合宿形式の第二十回「土曜友の会エンカウンター・グループ」は、八月に開催した。参加者は四十二名で盛会だった。相変わらず「インターカレッジ・エンカウンター・グループ」の色彩が強かった。大学生は、十大学(椙山、愛知教育、京都、島根、島根医科、広島文教、広島女子、広島修道、聖カタリナ、九州)から十二名の参加があった。
 今年度第二十一回も八月二十一日(金)〜二十四日(月)、大野町の国民宿舎宮浜グリーンロッジで開催する。ファシリテーターは、石川隆義(広島大学歯学部)、大島啓利(広島修道大学学生相談室、当相談室非常勤講師)、大中章(長尾病院、当相談室非常勤講師)、大西俊江(島根大学教育学部)、山西早苗、山崎恭子(広島修道大学学生相談室)、それに筆者、ほか若干名。申込締切は八月十日(月)である。
 また、学生相談室が支援している第十六回人間関係研究会「宮浜エンカウンター・グループ」は、三月に開催された。参加者は四十八名。大学生は、十三大学(東京、東京家政、工学院、明星、愛知教育、京都、関西、島根、広島、広島女子、山口県立、聖カタリナ、九州)から十六名。第十七回も、一九九九年三月十九日(金)〜二十二日(月)に開催を予定している。
 これらの「合宿エンカウンター・グループ」では、オープン・フライデーや土曜友の会のような話し合いが集中的に行われる。その中で、人と対比したり、自分の歩みを振り返ったりして自分を見直すことができたり、出会いや心の交流によって、自分自身をリフレッシュできたりする効果がある。
 あなたも一度、このような会に参加してみませんか。


三.研究会活動

 研究会に関しては、まず、相談室内の「学生相談研究会」を三回行った。出席者は、室長、専任・非常勤相談員、運営委員、事務補佐員などである。
 例年の通り、一般教職員向け「学生相談研究会」も開催した。昨年度は、一月に名古屋大学の鶴田和美先生を招いて、「大学生を理解する方法」と題する講演会を開いた。参加者は学内外から二十七名だった。午後は、鶴田先生にも加わってもらって、事例研究会を行った。事例は筆者が提出した。
 九月には、蒲刈町で行われた広島大学学生委員会・厚生委員会合同の「学生生活担当教官研究会」に、筆者が招かれて参加した。他学部や学生部の教職員の方々と交流できて、大変有益だった。
 広島学生相談研究会の例会にも、学生相談室の何人かが欠かさず参加した。
 ちなみに、広島学生相談研究会は、大学の学生相談(学生指導)関係教職員なら誰でも参加できる。年四回、会場校持ち回りで開催している。九月には、かけ出しカウンセラーや一般教職員向けとして、カウンセリング基礎実習を含む「研修会」も行った。関心をお持ちの先生方やその他の職員の方々のご参加を期待している(お問い合わせは学生相談室へ)。


四.わが国の学生相談

 この年度筆者は、日本学生相談学会特別委員会の活動の一環として、全国調査の企画・実施を担当した。タイトルは「学生相談機関に関する調査」(通称、学生相談基本調査)で、三年に一回の実施を計画している調査の初年度である。質問紙・回答用紙はA四判六ページ。対象は全国の大学・短期大学・高等専門学校の一二六一機関。回収率は六七%だった。
 この調査によると、学生相談機関を設置しているのは、全国の大学・短期大学・高等専門学校の四二%(学生一万一人以上の大学では九八%)であること。名称としては「学生相談室」がもっとも多いこと。学生相談機関の開設は、ここ数年増えていること。学生相談機関の開室日数の平均は週三・五日(学生一万一人以上の大学では五・一日)、開室時間の平均は週十九時間(学生一万一人以上の大学では三十三時間)であること。在籍学生一万人あたり実質カウンセラー数の平均は三・〇人(学生一万一人以上の大学では一・七人)で、広島大学の四・五人(この調査に回答のあった保健管理センターと総合科学部学生相談室のみ)は全国平均より多いことなどがわかっ た。
 なお、この調査の企画、実施、集計・分析、報告書文案の作成に際しては、非常勤相談員の大島啓利先生や、留学生センターの田中共子先生をはじめ学内外の多数の先生方に協力していただくことができた。
 これらの詳細は、「学生相談研究」(日本学生相談学会)第十九巻第一号に、約三十ページにわたって掲載されている。
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