初代学長 森戸辰男先生の書



 森戸辰男先生は初代学長として昭和二十五年四月から三十八年三月末まで十三年間学長を勤められた。先生が広島大学の初期の基盤整備をされたことは皆さん周知のことである。広大五十周年記念事業の一環として先生の残された蔵書や貴重なメモなどいわゆる「森戸文庫」の整理なども現在行っているところである。
 この度、森戸先生と親交のあった広島工業会元会長 田村雅人さんの御子息 田村真平日本テクニクス株式会社社長より、森戸先生の書が贈られ、学長室にかけることができた。それは昭和三十年に揮毫(きごう)された「以和為貴」という額である。
 田村真平社長は私と同じ広島ロータリークラブのメンバーで広島大学工学部卒であり、御父君も広島高等工業学校応用化学科卒で、日本テクニクス株式会社を築き上げられ、広島大学工学部の同窓会の元会長でもある。現在の東広島キャンパスの前にある広島工業会館の用地買収をされたということで先見の明のある先輩である。残念なことに昨年八月二十八日に八十八歳でお亡くなりになった。御子息の真平社長が森戸先生の書は自分の家に私蔵するよりも広島大学においてもらった方がよいだろうということで持参された。
 これで森戸先生の書は生物生産学部長室にある「海青草翠」という額と学長室のものと二面の額があることになった。

文・広島大学長 原田康夫
 

広大フォーラム30期2号 目次に戻る