フォトエッセイ(39) キャンパスの植物

文・挿絵・写真 隠善 由紀子(Inzen, Yukiko)
生物生産学部畜産系事務補佐員



モミジバフウ
Liquidambar styraciflua
 

紅葉したモミジバフウ

大きな幹から直接葉が出ている

生物生産学部入口より

モミジバフウの実
  
 東広島キャンパス・アカデミック地区の南側、生物生産学部より工学部を通り抜け、総合情報処理センターにいたるまでの南北に走る道路に、モミジバフウ〈紅葉葉楓〉が街路樹として植わっています。北アメリカ中南部から中央アメリカに分布する高さ二十五メートル〜四十五メートルにもなる落葉高木で、東広島市内でも街路樹として多く見られます。
 春にはカエデのような切れ込みのある幼葉を付け、温かさを増すにつれどんどん葉を茂らせ、梅雨を過ぎる頃には大木を覆いつくすがごとく成長し、暑い夏には涼しい木陰を提供してくれます。
 木一本づつにもそれぞれ特徴があり、まばゆいような若々しい黄緑色もあれば、深い緑色もあり、中には秋にもならないのにすっかり紅葉している葉を付けているものまでさまざまです。植わっている土壌やお日様の当たり具合によって変わってくるのでしょうか。
 秋風が吹き始めると見事に色づき、寒さとともに大きな葉をパラリパラリと脱いでしまいます。毎年変わりなく季節の移り変わりを知らせてくれる暦のようなモミジバフウですが、特に心に引かれるのは、長い枝に垂れた果実の愛らしさにあります。栗のイガにも見えますが、持っても痛くなく、とても個性的な形の実が、冬の落葉後の寂しいフウの木に無数に垂れ下がっている様子は、電飾をつけた大きなクリスマスツリーにも見え、とても楽しいものです。昨年はこのツリーがたくさんできましたが、今年はどうでしょうか。
 昨年、まだ黄緑色をした実を木から取り、机の上に置いていたところ、いつの間にか褐色に変わり、周りに無数の種をばらまいていました。どうやっても開きそうもない鳥のくちばしのような扉が開いて、“プッ”と種を吐き出した様子はとても面白く、驚かされました。
 私が通っていた市内の小学校にもこれと同じような木があって、やはり可愛い実が下がっていました。今まで同じフウの木だと思っていましたが、小学校のそれはアメリカスズカケノキだったようで、葉の切れ込みが浅く、なにより、枝から下がった実には、細かい凹凸はあっても栗のイガのようではなく、まさに丸い鈴をつけたようでした。ずっと昔、グラウンドの隅に植えてあった木から実をこっそり採り、木につけてあった「スズカケノキ」という名前に、“なるほど”と思ったことが思い出されました。
 余談ですが、生物生産学部の周りには、シイ、椿、サルスベリなど、可愛い木の実のなる木がたくさんあります。秋も深まった頃、散歩がてら、木の実集めでもされたらいかがでしょう。拾った実で素敵な秋のリースがつくれます。


   

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