教育実習を振り返って  

文・ 田中 亜希(Tanaka, Aki)
教育学部教科教育学科四年

 

 教育実習を終えて今振り返ってみると、瞬く間に時が通り過ぎていった二週間だったと思います。めまぐるしくはあったが充実していたせいか、教育実習で心身ともに消耗したので、今は何もやる気になれません。

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 実習期間中は毎朝七時前には起き、早々と校門をくぐり、部活へ向かう少数の生徒一人ひとりに挨拶をしていると、何だかそれだけでとても新鮮な気持ちになりました。あれこれ準備しているうちに、学校中がさまざまな音に包まれはじめ、活気を増していきます。学校があり、生徒がいるだけで現場はとても魅力的なものへと変化するのです。
 しかし一方、五十分の授業のために、どれだけ時間を費やし、苦しみ悩んだかは、教育実習生一人ひとりそれぞれに、一番身にしみて残っていると思います。睡眠を削って指導案を作成し、何度も失敗を繰り返しながら予備実験を行い、ある時は授業中に話す台詞まで考えて一回一回の授業に臨みました。
 始めの五分は緊張し声が震えたり、こちらの質問に対し、予想もしなかった生徒の一言に頭が真っ白になったり、毎回授業後の批評会では、指導教官や仲間に指摘を受け、自分の指導法について考え直させられました。
 私たちにとっては当然のことを、生徒の視点に立ち、当然という言葉では片づけることなしに、よりわかりやすく教え、考えさせるのには、本当にみんな苦労させられていたようです。

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 指導教官の「授業とは、今までのその人の生き方が反映する」という言葉が印象的で、心の中に残っています。とにかく、もっともっと勉強しなければならないと痛感させられました。
 生徒にとっては一回きりのその日の授業を、甘んじた知識だけでいいかげんなことを教えてはなりません。生徒のつまづきを拾い上げ全体に返していく力、生徒主体の、生徒の活動を生かす授業を進めていく力、これらのことは経験を重ねれば得られるものかもしれないけれども、これからの自分の身の振り方について考えさせられたことは確かです。私が理科の教師になり教壇に立つまでに、これからどんなことをしなければならないか、それがわかったような気がします。
 始まる前は不安で緊張した教育実習。いざ終わってみると、自分の中で得られたものの大きさに満足しています。二週間という短い期間で、教師を本気で目指す仲間に巡り会えたのも印象的でした。お互い助け合い、励ましあって、みんなそれぞれ輝いていたように思います。

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 実習校を去る日、授業中何度も歩いて生徒と会話をした生物教室を、一人でもう一度歩いてみました。いつか私にも、夢が叶い教壇に立ち、私の今までの生き方を反映した授業ができる日がくるはずです。
 何かに追われているようで泣きたいときもあったけれども、授業では生徒に助けられ、未熟ながらも「先生」と呼ばれ、「やっぱり教師になりたい」という思いにかられたのは私だけではないはずです。私を改めてそんな気持ちにさせてくれた教室を、後ろ髪引かれる思いで後にしました。  厳しく、しかし暖かい眼で指導してくださった指導教官の畦先生、そして私を支えてくれた仲間たちには感謝でいっぱいです。これからは自分なりにゆっくりと、人間としての幅を広げていこうと思っています。これからもどうぞよろしく。

 



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