文・ 正法地 孝雄(Shohoji, Takao)
情報通信・メディア委員会専門委員会委員長
牟田 泰三(Muta, Taizo)
情報メディアセンター等設立専門委員会委員長
近年の情報通信機器などの急速な発展に伴って、情報通信ネットワークが一般庶民にまで急激に普及してきました。新しい情報通信手段を活用した教育・研究は飛躍的に発展し、このネットワークを利用した学内外への広報・広聴活動などが近年重要な役目を果たすようになりました。
これに伴って、情報の集積やネットワークに関連するセキュリティーも重要な問題の一つとして急浮上してきました。各部局などで整備されている情報関連機器などの管理運営は、それぞれ独立に行われており、相互には関連性の乏しい管理運営体制となっています。しかも、それぞれ固有の目的で教育用情報機器の設置を行っていますから、その稼働状況は全体としては把握できていません。教育用情報機器の利用状況を把握し、各部局などの意見を十分に尊重した上で、全学的視点からこれら情報機器の有効活用を検討する必要があります。
このような情報環境の中で、情報通信システムおよび情報メディア環境の整備・運用に関する基本方針ならびにその将来構想などを、全学的な視点から総合的に把握・立案するための審議機関として、学長を委員長とした「情報通信・メディア委員会」が平成八年六
月に発足しました。この委員会のもとで、個々の関連事項について全学的な視点から専門的な検討を行うために、同年八月に「情報通信・メディア委員会専門委員会」(以後、専門委員会という)が設置されました。この専門委員会で審議された結果は、親委員会であ
る情報通信・メディア委員会によって改めて審議され、承認されると、全学の意思となります。
この専門委員会の構成員は、情報通信・メディア委員会でいろいろな観点から推薦され、おおむね全部局をカバーしています。
専門委員会では、各委員は所属部局という立場ではなく、広島大学の一構成員であるという立場から必要事項を審議しています。
専門委員会は、設置された当初から原則として月に二回の割合で開催され、必要関連事項を精力的に審議してきました。近頃は、情報公開という観点から、専門委員会の審議過程を大学構成員に広く公開しています。また、会議通知や議事要録はホームページ上で学
内限定の形で、すでに公開しています。
中国語版と英語版の「ネットワーク市民の手引き」
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情報通信関係の管理運営体制は、原則として利用規程とそれを具体的に例示した利用者ガイドラインの二本立てで行っています。これは情報通信関連技術などの急速な発展が続いているために、必要に応じて利用者ガイドラインに随時変更を加えて利用実態に合わせやすくするための措置です。
これまでに専門委員会はさまざまな事を取り扱いました。まず、「スペース・コラボレーション・システム事業実施要領」を平成八年九月に提案し同年十月に制定されました。スペース・コラボレーション・システム事業実施委員会は同年十月から活動を開始しまし
た。現時点では広島大学のVSAT局は東広島キャンパスと東千田キャンパスの二局があります。
ネットワークに関わる規程として、本学のWWW(World Wide Web)サーバを適正かつ円滑に運用するために「広島大学WWWサーバ運用要項」を提案し、広島大学の公式サーバは平成九年二月に定められました。広島大学の公式サーバは決まりましたが、現
在のところ責任を持って運用する部署がなく、当面は総合情報処理センターの好意により運用されています。しかし、この件は責任部署を早急に決定する必要があります。
コンピュータ・ネットワークに関連する規程としては、「広島大学コンピュータおよびコンピュータ・ネットワーク利用者ガイドライン」(通称、ネットワーク市民の手引き)が承認されました。
後者の「ネットワーク市民の手引き」は、前者「広島大学コンピュータおよびコンピュータ・ネットワーク利用者要項」の趣旨を本学構成員が広く理解できるように、禁止事項を定めた第四条を中心に、わかりやすく解説したものです。この挿し絵入りカラー刷りの
A5判の小冊子は、平成九年度からは新入生全員にネットワーク利用のためのアカウントと共に配布されています。
挿し絵入りの英語版は平成十年度から留学生全員に配布されています。また、中国からの留学生への便宜を図るために中国語版が作成されました。これらのガイドラインなどは広島大学のホームページの委員会の項目に掲載してあります。
「ネットワーク市民の手引き」に書いてありますように、広島大学の公式サーバはオーソライズされ、ネットワークを利用できるのは、学生の権利でも、義務でもなく、単なる「学生の特典」です。ネットワークを匿名で利用したとしても、利用経過記録などを詳細
に調べるとほとんどの場合利用者名が特定できますので、不必要に匿名でネットワークを利用しないようにしましょう。
広島大学の情報伝達基盤である広島大学情報ネットワーク(HINET)システムの管理運用には、ボランティアとして多くの方々が携わっています。ボランティアの方々が、ネットワーク管理にあたっての行動指針とすべき事項をまとめたものとして、「ネットワ
ーク管理者ガイドライン」が平成九年九月に制定されました。
平成九年九月には、情報通信・メディア委員会、附属図書館、総合情報処理センター、情報教育研究センター、外国語教育研究センターが共同で、広島大学における情報教育環境や高度学術情報活用環境のあり方などについて、「二十一世紀の広島大学の情報環境を考える」と題されたシンポジウムを開催しました。このシンポジウムの内容は、平成十年三月に刊行されています。
広島大学のホームページを飾るトップページは大学の顔として重要な役目を果たします。このトップページについて、センスが良く機能に優れているものがあれば、コンテストの応募作品から大学のトップページに採用しようと、本年五月末日の締め切りで広大フォ
ーラムで大学構成員から公募しました。
文部省への予算要求や学内での予算要求に対して、各部局などから情報メディア関連のさまざまなシステムや機器類などの要求がこれまでは個別に出ています。情報メディア関係の効果的な予算要求の方策として、今後は全学的視点から十分な調整・検討を行う必要
があります。
さらに、導入された情報機器やシステムに対して、利用の効率や成果などを客観的に評価し、後日のための資料として保存しておく必要がありますので、専門委員会ではこれらについてのガイドラインを鋭意作成中です。完成し次第、情報通信・メディア委員会にか
けられる予定です。
情報メディアセンター(仮称)、広報室(仮称)、情報メディア学研究科(仮称)概念図
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二十一世紀に向けての社会的・経済的な構造改革と共に、情報通信メディア分野のインフラストラクチャーなどの構築は、日本における重要な国家事業になっています。本学ではとりわけ、総合情報処理センターへの期待が高まっています。しかし、近年、情報通信・メディア委員会や情報教育研究センターやSCS事業実施委員会などの設置に見られるように、総合情報処理センターの役割や位置づけが明瞭でなく、しかも、これらの組織との関連性も明確ではありません。これに対して学内での関連性を早急に明確にする必要があります。
そのため、専門委員会は、本学の既存の枠組の中でのこれまでの改革では、現在わが国が直面している二十一世紀に向けての改革としては不十分であるという認識のもとに、本学の情報メディア体制の見直しのための検討作業をほぼ一年間にわたって行ってきました
。その成果は「情報メディア体制の見直しと提言」に詳述されています。この提言の内容は、教官にはおおむね行き亘っており、大学のホームページにも掲載されています。
その提言では、「情報メディアセンター(仮称)」、「広報室(仮称)」ならびに「情報メディア学研究科(仮称)」の設立という結論に達しました。しかも、これら三つの組織は相即不離の関係に置かれ、調和のとれた形で設立される必要があります。
この提言の概略は、「情報メディアセンター(仮称)、広報室(仮称)、情報メディア学研究科(仮称)概念図」の通りです。この概念図は、業務部を点光源と考えて「情報メディアセンター(仮称)」を照射し、その陰として「情報メディア学研究科(仮称)」が浮かび上がるといったイメージで作成されています。
本影の部分は、研究科の核になる専攻・講座であり、半影の部分は、既存の研究科からの協力という形で、新たな情報メディア学研究科に参画してもらう部分です。また、概念図でセンターと研究科の関連性はそれぞれの色で対応しています。色の薄い半影の部分は
既存の研究科などからの協力部分です。平行四辺形は既存の組織であり、この提言内容が実現した暁には色の薄い枠の平行四辺形の部分はそれぞれの新組織に吸収され、太い枠の平行四辺形は研究科とより密接な関係になる組織であることを示しています。
この提言のうち、「情報メディアセンター(仮称)」と「広報室(仮称)」の設立のための委員会として、「情報メディアセンター等設立専門委員会」(以後、設立専門委員会)が平成十年五月の情報通信・メディア委員会で承認されました。この設立専門委員会は、その後、精力的に作業を行い、近日中には結論が得られるものと期待されています。
情報通信・メディア委員会情報メディアセンター等設立専門委員会
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設立専門委員会は第一回目の委員会を六月十日に行い、情報メディアセンター(仮称)及び広報室(仮称)という構想を現実のものとするために、概算要求を視野に入れた具体案づくりを始めました。
この構想では、全学の図書情報を統括している図書館、電子情報を統括している総合情報処理センター、教養的教育改革に伴って学内措置により創設された情報教育研究センターと外国語教育研究センターなどを核とした融合組織を構築し、全学に散在する情報関連
組織の協力を得ながら、情報メディア環境を統合する有機的な組織作りを目指しています。
このような大組織の具体案を練るためには、機動性のある小グループで集中的に討議することが必要であると考え、素案づくりのための部会(情報メディアセンター等設立専門委員会部会)を六月十七日に発足させました。部会では、六月から八月にかけて精力的な
討議を重ね、九月上旬にはほぼ成案をみました。
この間、部局長連絡会議でも、情報メディアセンター構想に対する意見を聴取するとともに、各関連センター等の現状及び将来構想を聞き、全学的な意思を反映したものとすべく十分な配慮をはらっているところです。部会でまとめられた素案は、設立専門委員会で
さらに検討を加えられ、情報通信・メディア委員会へかけられる予定です。
広大フォーラム30期3号 目次に戻る